近年、脳の研究は目覚ましく発展し、新しい研究方法の開発によって、脳における情報処理の神経機構の解析や学習・記憶・随意運動の計画といった脳の高次機能の解析からその基礎となる分子生物学的過程の解析にいたるまでの広い研究分野で新しい貴重な知見が蓄積されてきている。また、脳・神経系の疾患の病因の解明、診断法・治療法の開発の面でも、新しい研究方法の発展により、大きな進歩が見られる。
しかし、脳における情報処理機構の詳細や脳の発達・神経再生・高次脳機能等の基礎となる形態学的・生化学的・分子生物学的機構には未だ不明な部分が多く、高齢化やその他の社会的問題に伴う脳疾患も臨床的に大きな問題となっていて、基礎的な面でも臨床的な面でも、未だ解決されていない根源的問題が数多く残っている。このような脳にかかわる諸問題を解決し、脳研究をさらに幅広く高度に発展させるためには、それぞれの分野の脳科学者が有機的に連携して研究を
推進することが必要である。
筑波地区では、筑波大学をはじめ数々の研究機関で大勢の研究者によって脳に関する様々な問題について分子レベルから行動学的レベルに至るまでの幅広い独創的な研究が続けられ、さらに臨床応用にかかわる様々な問題についても創造性に満ちた研究が行なわれているが、これらの脳の研究者が集まり、研究成果や研究計画について話し合い、批判し合い、お互いの意見や情報を交換する組織はまだできていない。筑波地区における脳研究を一層発展させていくためには、このような組織の存在が不可欠である。そして、筑波大学は筑波地区の国公立・民間の研究機関から、筑波地区全体の脳研究者のための組織を作る労を取ることが要請されている。
そこで、筑波地区における脳研究の長期的発展のために、出来るだけ早く、筑波大学にいる我々が発起人となって、この地区の脳研究者の組織「つくばブレインサイエンス協会 (Tsukuba Brain Science Association: TBSA)」を発足させるべきであるとの結論に至った。この協会の任務は、まず、各研究機関の研究者の研究内容の紹介(研究発表)・意見交換(自由討論)の場を定期的に設けて研究者間の情報・意見の交換の機会を定着させることである。そして、この情報交換のなかから新しいプロジェクト研究を推進し、研究活動の実績を内外にアピールしていくことが、筑波地区全体の脳研究の発展のための重要なステップを作ることになる。
平成5年6月
発起人代表
|
筑波大学
|
基礎医学系
|
大野 忠雄
|
発起人 |
筑波大学 |
基礎医学系 |
岡戸 信男 河野 邦雄 工藤 典雄
後藤 勝年 松下 松雄 |
|
|
臨床医学系 |
庄司 進一 能勢 忠男 |
|
|
生物科学系 |
斎藤 建彦 |
|
|
応用生物化学系 |
宗像 英輔 |
|
|
心理学系
|
岩崎 庸男
|
|
工業技術院
|
電子技術総合研究所
|
松本 元
|
|
理化学研究所 |
分子腫瘍学研究室 |
相沢 慎一 |
|
|
分子神経生物学研究室
|
御子柴 克彦
(東京大学 医科学研究所 化学研究部)
|
|
山之内製薬
|
第一創薬研究所
|
臼田 真治
|
|
エーザイ |
筑波研究所 |
荒川 義弘 |