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大学院生募集

我々の研究室では、複雑な神経回路がどの様にして形成されるか、神経系で情報がどの様にして伝達されるのかに興味を持って研究を行っています。この為に、分子生物学的手法を軸に発生生物学、細胞生物学、形態学の技術を駆使し、マウス、ゼブラフィッシュなどのモデル動物を用いて、脳神経系の成り立ちと働きについて総合的に理解する事を目指しています。   神経科学、発生学、分子生物学に興味があり、やる気のある学生を募集しています。大学院受験を希望される方は、桝まで連絡下さい

研究の概要

脳神経系は、発生期に神経細胞の分化、軸索伸長、シナプス形成などの過程を経て形成され、生後に神経活動依存性のシナプス修飾などを経て、成熟脳における機能を獲得していきます。 我々の研究室では神経回路形成と機能獲得の分子機構に焦点を絞り、分子生物学的手法を軸に発生生物学・細胞生物学・形態学などの技術を駆使して、脳神経系の成り立ちと働きを明らかにする事を目指しています。

研究の内容

(1)ネトリン受容体の同定

ネトリンは軸索ガイダンス蛋白の1つであり、発生期の神経系で軸索を誘引したり反発したりする事により神経回路形成に重要な役割を果 たしています。我々はヒト大腸癌の腫瘍抑制遺伝子として知られていたDCC (Deleted in Colorectal Cancer) や線虫UNC-5遺伝子の相同遺伝子がネトリンの受容体である事を発見し、神経回路形成におけるそれらの遺伝子の機能的意義を証明しました(Nature 386, 796-804, 1997; Nature 386, 833-838, 1997; Cell 87, 175-185, 1996.)。

(2)ヘパラン硫酸エンドスルファターゼの解析

私たちは、ヘパラン硫酸と呼ばれる糖鎖のリモデリングを行う新しいスルファターゼ(SulfFPと命名)を単離しました。ヘパラン硫酸は、細胞の増殖、移動、分化、形態形成などを制御する分子ですが、SulfFPはその微細構造を変化させることによってシグナル伝達を変えることが分かってきました。最近、ノックアウトマウスを使った実験から、SulfFPが神経回路の形成に重要な役割を担っていることを明らかにしました。糖鎖科学は、ポストゲノム時代の医学・生物学研究の重要課題と考えられています。

(3)オートタキシン遺伝子の解析

オートタキシン遺伝子は、癌細胞の移動を制御する分子として単離されましたが、最近、脂質メディエーターであるリゾフォスファチジン酸(LPA)の合成酵素である事が発見され、注目を浴びています。我々は、マウスを用いて発生過程における生理機能の解析を行い、これまでに、オートタキシンが血管形成や神経発生に必要であることを明らかにしました。脂質分子によるシグナル伝達も、ポストゲノム時代の重要な研究テーマの1つです。

(4)新しいWnt活性化因子Ccdの解析

Wntシグナルは、細胞の増殖、分化、移動などにおいて重要な役割を果たしており、その調節が正しく行われないと癌になることが知られています。我々は、ゼブラフィッシュの神経発生制御遺伝子として、Wntシグナルの活性化を行うCcd1遺伝子を発見しました。ゼブラフィッシュは発生が早く神経回路を可視化するのも容易なため、神経発生研究で良く使われています。現在、哺乳動物における遺伝子機能も明らかにしようとしています。

(5)ニューロンの移動と核形成のメカニズムの解析

神経回路形成期には、ニューロンの移動が顕著に観察されます。我々は、電気穿孔法を用いてマウス胎児脳に蛍光蛋白質遺伝子を導入する方法を確立し、ニューロンの移動パターンを解析することを可能にしました。その技術を使って、ニューロンの移動様式と神経核形成のメカニズムを明らかにしました。

参考文献

  • 桝正幸. 発生から見た神経回路のでき方. 朝日選書「脳はどこまでわかったか」(井原康夫編) pp. 257-284, 2005.
  • 桝正幸.  ヘパラン硫酸糖鎖による神経ネットワーク形成制御.  蛋白質核酸酵素. 53, 489-494, 2008.

研究室の構成

教授1名、講師2名、助教1名。
大学院生4名、ほか5名。

大学院進学には、人間総合科学研究科のフロンティア医科学専攻(修士課程・2年)と生命システム医学専攻(博士課程・後期課程相当・4年)に入学する進路があります。医学部、歯学部などを卒業した人は直接生命システム医学専攻に進学します。それ以外の学部を卒業した人は、フロンティア医科学専攻を修了後、生命システム医学専攻に進学することになります。

大学院受験を希望される方は、必ず事前に相談して下さい。 個別に面接し、研究の内容や希望、生活等について話し合います。