「ヒトの価値観を理解するための学問:神経経済学」

ヒトは日々の生活の中で、物事の良し悪しを判断して暮らしています。このヒトの価値観が脳から生まれる仕組みの理解を目指して研究しています。神経経済学 (Neuroeconomics)と呼ばれる、神経科学とミクロ経済学を融合した最先端の学際的な研究です。例を挙げると、

・喉が乾いた時に飲む水は美味しいのなぜ?
・なんでペプシよりコーラが好きなの?
・ギャンブルってどきどきしますよね?

といった事柄に関わる脳の機能を調べます。ヒトとそのモデル動物のマカクザルに認知行動課題をおこなわせ、乾きや空腹などの欲求の程度に応じて脳がどのように価値判断を行うのかを調べます。また、脳の活動を操作することにより、観察した脳の活動が判断に与える影響を調べます。操作により脳の正常な機能とその異常を調べることで、精神疾患の一つであるうつ病の理解を目指しています。

主な研究テーマとしては、以下のものがあります

価値判断が実現される仕組み

ヒトの行動を良く説明する行動経済学の理論の一つに、プロスペクト理論が知られています。例えば、ヒトはリスクを嫌い(リスク嫌悪)、損失を過度に嫌います(損失忌避)。我々の脳からこのような行動が生み出されますが、この脳の仕組を動物を用いて研究していくことでヒトの価値観の理解に繋がります。
 動物とヒトの消費行動はどう違うのか?を厳密に検証します。更に、既存のプロスペクト理論を超えた理論体系の構築を目指しています。現在、価値の学習則として知られる強化学習理論との論理的融合を進めています。

乾きや空腹が意欲を生み出す仕組み

血中に含まれるホルモンを測定することで、お腹の好き具合を客観的に測定・評価します。血液の浸透圧を測ることで、喉がどの程度乾いているのか客観的に測定・評価します。動物の生理状態を客観的に評価することが可能のとなるため、欲求がどうやって体の中で生まれるのかをモニターし、脳と体のコミュニケーションを理解できたら、、、と思っています。
 うつ病の一つの診断基準の一つにこれらの欲求の異常があるため、どうしてやる気がでるのか?なくなるのか?という理解を目指します。将来的には、採血で心の状態を評価できるといいなぁ、、と妄想しています。また、状態非侵襲で意欲を測定し介入する技術の開発を目指しています

脳の計算の仕組み

脳の神経細胞がノイマン型コンピュータの様に計算を行っているとは考えられません。じゃあ、どうやって脳は計算しているの・・・?計算の仕組みは、ほとんどわかっていません。
 脳機能の本質に迫るために、計算の仕組みを探求しています。計算の仕組みを理解するために情報処理理論を用いるため、情報科学の専門家と共同研究を行うことで、革新的な研究を目指しています。

脳活動の操作

光受容体遺伝子をウィルスベクターを用いて神経細胞に導入し、光を照射することで細胞を人為的に活性化する技術を用いて脳の特定の機能を調べます。新規実験技術の導入も大切です。