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臨床
重症心不全・VAD・IMPELLA

IMPELLA (補助循環用ポンプカテーテル)

【担当医師】
平谷 太吾山本 昌良

IMPELLA (インペラ)は、2004年からヨーロッパで、2008年からアメリカで販売が開始された、小型の心内留置型ポンプカテーテルです。心臓の左室の血液を汲み出し、大動脈から全身に送り出す補助循環装置です。日本では、2016年9月に医療機器製造販売を取得し、筑波大学病院では2019年2月から使用を開始しています。各科の医師 (循環器内科・心臓血管外科・救急集中治療科・麻酔科)のほか、看護師、臨床工学技士、診療放射線技師などで構成されるハートチームで診療しています。

❶心原性ショックと補助循環装置

心臓病の中でも、急性心筋梗塞、重症心不全、致死性不整脈などにより、心臓が全身に十分な血液を循環できない状態を心原性ショックと呼びます。心原性ショックは現代においても致死率が高く、院内死亡率は30~50%と報告されています。心原性ショックに対しては、強心薬や昇圧薬などの薬物療法が行われますが、効果が不十分な場合、もしくは薬物療法の効果を待つ余裕すらない緊急の場合には、補助循環装置の使用が検討されます。これまで広く使用されてきたものとして、大動脈内バルーンパンピング (IABP)や経皮的心肺補助装置 (PCPS)があります。しかし、IABPによる心拍出量の増加は10~20%にすぎないと言われています。またPCPSは条件が整っていれば十分量の補助流量を確保できますが、大腿動脈からの逆行送血であるため、心臓に負荷をかけてしまう欠点があります。

❷IMPELLAの利点

IMPELLAは、開胸せずに経皮的に挿入できる補助循環用ポンプカテーテルです。そのため必要時には迅速かつ低侵襲に挿入することが可能です。また左室の血液を汲み出し、上行大動脈に順行性に送血するため、循環補助に加えて、心負荷軽減・心機能回復を期待することができます。

❸適応と禁忌

補助人工心臓治療関連学会協議会 インペラ部会により、IMPELLAの適正使用指針が示されています。

適応

 心原性ショック等の薬物療法抵抗性の急性心不全。
内科的治療抵抗性の急性左心不全を主体とする循環不全が遷延する症例で、従来のIABPまたはPCPSによる循環補助では不十分と想定される病態にあるもの。

適応外

 呼吸不全および右心不全主体の症例。
※左心不全が併存する症例では、PCPSとIMPELLAの併用が検討されます。

禁忌

 大動脈弁機械弁
 中等度以上の大動脈弁閉鎖不全症
 左室内血栓

また、大腿動脈から挿入し大動脈を経て左室に留置するため、大動脈疾患 (瘤、解離など)や末梢動脈閉塞性疾患がある場合には、挿入手技に十分な注意が必要となります。

IMPELLA適応病態の代表例

 急性心筋梗塞による心原性ショック
 劇症型心筋炎
 低左心機能患者にPCPS挿入時:逆行送血による左室負荷に対する左室アンロード

患者さんの
紹介に
ついて

筑波大学病院では、あらゆる心疾患に対し専門スタッフが対応しています。心原性ショック等の重症心不全患者を救命すべく、ハートチームで連携して集中治療を行っています。IMPELLA適応患者においては、より早期に使用開始することで、転帰が向上することが報告されています。重症心疾患患者さんの管理にお困りの際は、いつでもご連絡ください。
 担当医師 平谷太吾・山本昌良
 連絡先 
日中:筑波大学循環器内科 ホットライン
029-853-7641 (2020年4月から開設)
夜間:病院代表
029-853-3900 (循環器当直医へ)

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