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構造的心疾患
インターベンション

構造的心疾患インターベンションとは

弁膜症(大動脈弁狭窄症、僧帽弁狭窄症・閉鎖不全症)、先天性心疾患(心房中隔欠損症、動脈管開存症)、閉塞性肥大型心筋症など、従来は外科手術が唯一の治療法であった構造的心疾患に対し、カテーテルを用いた低侵襲治療(インターベンション)が開発され、近年急速に発展しています。構造的心疾患インターベンションとはこれらの疾患群に対するカテーテル治療を包括した概念であり、当院では下記の治療を積極的に実施しています。

診療実績・研究業績  

重度大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)

【担当医師】
星 智也渡部 浩明平谷 太吾

TAVIは外科手術が困難とされていた患者さんに対する新しいカテーテル治療です。

大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁とは、心臓の左心室と大動脈を隔てている弁であり、心臓の出口に相当します。大動脈弁狭窄症とは、この大動脈弁が石灰化などにより硬くなり十分に開かなくなる病気です。動脈硬化が原因であることが多く、近年では高齢化に伴って増加しています。この病気の患者さんは大動脈弁が十分に開かなくなるために全身が血行不良となり、心臓に負担がかかっています。しかし大動脈弁狭窄症は軽度のうちは自覚症状がないことが多く心雑音などをきっかけに診断されることもあります。 大動脈弁狭窄症が進行すると、息切れ、胸痛、失神、むくみや呼吸困難などの心不全の症状が出現します。重度大動脈弁狭窄症に進展し症状を自覚するようになると比較的早く進行することがわかっています。狭心症状が現れると5年、失神が現れると3年、心不全をきたすようになると2年が平均余命と言われています。また重度大動脈弁狭窄症の特徴として突然死が多いことも知られています。自覚症状がみられてきた場合には早めの治療が必要です。

大動脈弁狭窄症に対する3つの治療法

表は右にスクロールしてご覧になれます。

 メリットデメリット
薬物治療 体の負担が少ない 根本的治療ではないため、効果が限定的である。
 病状自体は進行する。
外科的弁置換術 確立された根本的治療である。 開胸手術が必要
 人工心肺が必要
 体の負担が大きい
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI) 外科的弁置換術のリスクが高い方でも受けることができる根治的治療である。  TAVI特有の合併症がある。
 合併症によっては開胸手術が必要になることがある。
 長期成績が不明。

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)について

❶TAVI生体弁と手術方法

現在、日本で使用できるTAVI生体弁は2種類です。バルーン拡張型、自己拡張型の生体弁があります。いずれも世界的に広く使用されています。金属でできたフレームの中に生体弁(ウシもしくはブタの心膜から作った弁)が縫い付けられています。
手術方法としては、体の負担の少ない大腿動脈アプローチが一般的です。5~6mm前後のカテーテルを鼠径部の血管から挿入します。血管の性状が良ければ穿刺法で行うことで数mmの傷で行うことができ、術後は痛みもほとんどなく傷も目立ちません。
足の血管の状態(狭窄や蛇行)によっては大腿動脈アプローチが困難であることもあります。その場合には心尖部アプローチ、鎖骨下動脈アプローチ、直接大動脈アプローチといった他の方法をとります。
いずれの生体弁を用いるか、またいずれのアプローチ方法を用いるかについては、大動脈弁や血管の状態によって異なりますので、適切な治療を行えるように、循環器内科、循環器外科、麻酔科などを含むハートチームで検討します。


❷TAVIの対象となる患者さん

通常の外科的弁置換術のリスクが高いと判断された重度大動脈弁狭窄症の患者さんです。具体的には下記のような患者さんが該当します。

ご高齢の方(80~85歳以上)

過去に開胸手術の既往がある方(冠動脈バイパス術など)

肺気腫などの呼吸器疾患を合併している方

肝硬変などの肝疾患を合併している方

胸部に放射線治療歴がある方

高度大動脈石灰化のため手術困難と判断された方

体力や免疫力が低下している方

他の合併疾患がある方など

❸TAVIのメリットおよびデメリット

メリットデメリット
 外科的弁置換術に比べて身体への負担が少ない
 入院期間が短い
 手術による体力低下がほとんどなく、入院前の生活に戻るのが早い
 外科的弁置換術が困難でもTAVIが可能である
 外科的弁置換術にくらべて歴史が浅いため、10年以上の長期データは明らかではない
 弁や大動脈の石灰化や形態によってはTAVIが高リスクの患者さんもいる
 機械弁は選択できない
メリット
 外科的弁置換術に比べて身体への負担が少ない
 入院期間が短い
 手術による体力低下がほとんどなく、入院前の生活に戻るのが早い
 外科的弁置換術が困難でもTAVIが可能である
デメリット
 外科的弁置換術にくらべて歴史が浅いため、10年以上の長期データは明らかではない
 弁や大動脈の石灰化や形態によってはTAVIが高リスクの患者さんもいる
 機械弁は選択できない

TAVIもしくは外科的弁置換術のいずれが望ましいかについては、ハートチームで検討します。

❹TAVIで起こりうる合併症

体の負担が少ないといっても対象となる患者さんによっては合併症や死亡の危険がないわけではありません。日本におけるTAVI後30日以内の死亡率は1~2%です。以下のような合併症があります。

血管損傷

心臓損傷

不整脈
ペースメーカーの新規植え込みが5~10%で必要になります

冠動脈閉塞、心筋梗塞

弁周囲逆流

人工弁の脱落

脳梗塞

腎不全、透析

その他

❺当院の成績

日本では2013年にTAVI治療が保険適応となりました。当院では2015年6月に施設認定を取得し、2015年9月から治療を開始しました。2018年11月時点までに101例のTAVI治療を行い、良好な成績を得ています。2018年4月からはより傷の小さい穿刺法(数mm程度の傷)で治療を行うようになり、患者さんの体の負担もより少なくなっています。

表は右にスクロールしてご覧になれます。

 大腿動脈アプローチ(87例)その他のアプローチ(14例)合計(101例)
生体弁種類 Sapien 3/XT 66例
Evolut 21例
Sapien XT 12例
Evolut 2例
Sapien 3/XT 78例
Evolut 23例
成功 87例(100%) 13例(93%) 100例(99%)
30日以内もしくは入院中死亡 0(0%) 0(0%) 0(0%)
緊急手術への移行 0(0%) 0(0%) 0(0%)
ペースメーカー植え込み 2(2.0%) 0(0%) 2(2.0%)
下肢血管損傷 1(1.0%) 0(0%) 1(1.0%)
冠動脈閉塞 0(0%) 0(0%) 0(0%)
心タンポナーデ 1(1.0%) 0(0%) 1(1.0%)
脳梗塞 1(1.0%) 0(0%) 1(1.0%)

※鎖骨下動脈アプローチでデバイス不通過のため不成功 1例

2015年9月~2018年11月

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