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先天性心疾患(心房中隔欠損症: ASD)に対する経カテーテル的デバイス閉鎖治療

【担当医師】
石津 智子町野 智子川松 直人

心房中隔欠損症とは

心房中隔欠損症(Atrial septal defect:ASD)は右心房と左心房を隔てる壁(心房中隔)に穴があいている先天性心疾患で、成人においては最も頻度が高い先天性心疾患です。心房中隔欠損症は、成人の先天性心疾患の約45%を占め、女性に多く(男女比1:2)、欠損孔の自然閉鎖は稀と言われています。

心房中隔欠損症の症状

症状として、疲れやすい、運動すると息切れがする、風邪や肺炎等の呼吸器系の疾患になりやすいなどとされています。通常、乳幼児期にはほとんど症状は無く、心雑音も弱く、気がつかない事があります。幼児期や学童期に発見される事が多く、30~40歳代以降に心臓から拍出する血液が不十分となり、全身が必要とするだけの血流量を保てない心不全症状が出現したりします。

心房中隔欠損症に対する治療

外科治療が従来の標準治療でしたが、近年では閉鎖栓を用いたカテーテルによる治療が行われるようになっております。心房中隔欠損症に対するカテーテル閉鎖術の大きな利点は、外科手術に比べてはるかに低侵襲であることです。外科手術の場合は開胸し、人工心肺を用いる必要があります。また右心房に切開を入れなくてはなりません。一方、カテーテル閉鎖術ではカテーテルを挿入するために鼠径部を穿刺するだけで済み、治療後は数日で退院することが可能です。治療翌日から症状が改善する方も多くおられます。一方で、この治療の欠点はすべての心房中隔欠損症が閉鎖できるわけではないことです。まず、心房中隔欠損症にはいくつかのタイプがあり、カテーテル閉鎖術が可能なのは、二次孔欠損型の心房中隔欠損症に限られます。さらに、欠損孔の大きさ、欠損孔周囲の縁(閉鎖栓の挟みシロ)、周囲の構造物との距離によっては、閉鎖栓が安全かつ安定した状態で留置できないと判断され、適応外となることがあります。当院では患者さんにとって最も良い治療を常に考えた治療を行っており、安全で確実な治療を行うように心がけております。

カテーテルによるASD閉鎖治療の合併症

体の負担が少ないといっても対象となる患者さんによっては合併症の危険がないわけではありません。以下のような合併症があります。閉鎖栓の脱落や高度の欠損閉鎖不全(残存短絡)、その他不測の事態(心浸食など)によって閉鎖栓を体外へ取り出さなければならない事態が発生した場合、外科手術によって取り出すことが必要となる可能性があります。 日本における脱落の発生率は0.45%、心浸食の発生率は0.2%と報告されています(2017年までの報告)。

閉鎖栓の脱落

心浸食
(erosion)

欠損の閉鎖不全
(残存短絡)

カテーテルによる
心臓や血管の損傷

経食道心エコーによる
食道の損傷

不整脈

脳梗塞

感染症

造影剤アレルギー

頭痛、片頭痛

その他

他の治療方法

外科手術:全身麻酔、人工心肺を用いて手術を行う方法です。欠損部位はパッチ(繊維布)を用いて縫合するか、小さい場合にはパッチを用いずに直接縫合します。現在では手術死亡率も低く、確立された治療となります。カテーテル治療では難しい場合にも手術では直視下に確実に治療可能です。欠点としては、入院期間が長くなること、胸に傷跡が残ることがあります。

当院の成績

当院では2016年11月から治療を開始しました。2022年12月までに同様の治療である卵円孔開存閉鎖術と合わせて114例のカテーテル治療を行い、良好な成績を得ています。

 成功率 100% (114例中114例成功)
 合併症 0%(脱落 0%, 心浸食の発生 0%, その他の合併症 0%)

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