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筑波大学医学部麻酔科
  
研究活動
■研究活動

  我々は、手術の麻酔、集中治療、救急・蘇生、疼痛治療(ペインクリニック)の4つからなる広い臨床領域において、専門的に診療を行っています。未熟児から 超高齢者まで幅広い年齢層を対象とし、手術室・集中治療室などにおいて患者の全身状態の管理や、病棟・外来などにおいて術後急性痛や慢性痛の治療活動をし ています。日常の診療における疑問点の解決や診療レベルの向上などを主眼に臨床に即した臨床研究を行い、また、研究成果を臨床に還元することを最終目標に した基礎研究を展開しています。研究を行う際には麻酔科内のミーティングで検討した後、臨床研究は附属病院の倫理委員会に諮り承認を得て、ご賛同いただい た方々から貴重な研究データ・試料をいただいています。基礎研究は筑波大学倫理委員会に諮り、実験動物使用規約や遺伝子実験規約などを遵守し、社会的・倫 理的モラルに反しないよう注意を払っています。

各研究は下記をご覧ください。

■研究概要
 臨床麻酔は、生理学、生化学、薬理学、物理・化学、生物学、解剖学などの基礎医学と臨床医学全般にわたる幅広い知識が必要とされる「生体管理学」という新しい概念であり、臨床のみならずその研究領域も多岐にわたっています。

“Send Messages from TSUKUBA to the world”
■研究テーマ

1)動脈圧受容体反射・心臓迷走神経反射の解析
 近年、麻酔からの覚醒が迅速になり、日帰り手術も増加傾向にあります。 循環反射に及ぼす麻酔薬の影響がどの程度残存するのか、回復過程の把握が重要と考えられます。
 Oxford method
 Spontaneous sequence method
 Neck chamber method
などの方法を用い各種麻酔薬の動脈圧受容体反射・心臓迷走神経反射等の解析研究をしています。
スペースシャトル内での実験風景
スペースシャトル内での実験風景

2)脳表血管の直接観察
 脳蘇生には脳圧・脳血管のコントロールが重要です。各種薬剤の脳血管に及ぼす影響を直接観察できる実験系を使用し、さまざまな生理的変化(血圧、炭酸ガス分圧、酸素分圧)の脳血管に及ぼす影響を直接観察する研究をしています。

3)Langendorff heartによる心臓に対する薬物の直接作用
 ランゲンドルフ孤立心モデルは、血管因子、神経反射、カテコラミン濃度などの影響を受けない実験系です。この実験系を用いて、使用した薬物そのものの心臓に対する直接作用を観察しています。
イメージ

4)疼痛モデルと疼痛評価法
  麻酔科医にとって痛みは解決しなければならない課題の一つです。痛みには多くの原因が有り、各々の評価方法があります。疼痛モデルと疼痛評価法を考案して います。疼痛モデルにおける急性侵害刺激には、熱刺激(Hot-plate, Paw flick, tail flick, tail dip)や機械刺激(Paw pressure, von Frey)が有ります。化学刺激による炎症性疼痛にはホルマリン、カラゲニン、熱傷、手術(足底に皮切と縫合)などを用い、ニューロパシックペインモデル では神経の結紮法を工夫しています。免疫組織染色の方法や動物を観察するためのデバイスにも工夫し、痛みについて深く研究しています。
改良型BP-98A(手作り)
改良型BP-98A(手作り)

5)麻酔薬が中枢神経細胞に及ぼす作用の電気生理学的観察
  麻酔薬、特に静脈麻酔薬の中枢神経系の神経細胞に対する作用を電気生理学的手法(主にスライスパッチクランプ法)を用いて解明しています。現在、麻酔薬は GABAのみならず、様々な受容体に作用することが分かってきました。実験から明らかになった個々の麻酔薬の特徴を臨床に反映させることができたらと考え ています。
6)人工呼吸中の無気肺に対する呼気時胸郭圧迫法
  人工呼吸中の無気肺ウサギモデルにおいて、呼気時胸郭圧迫法( スクィージング)が酸素化および換気に及ぼす効果や気管内吸引併用時のガス交換に及ぼす効果を観察し、有用性を検討しています。人工呼吸中の無気肺を改善 する方法を確立し、臨床に役立てたいと考えています。(右参考図は、クリックで拡大表示します)
概念図

7)テーラーメイド医療を目標とした遺伝多型の解析
  遺伝多型という差異に注目し、生体内で働く遺伝子および遺伝子が設計図となって生成される各種酵素・受容体などタンパク質の個人差(Genotype、 Phenotype)と麻酔薬の効き具合の関係を調べています。個々の患者において薬剤が効きやすいのか、効き難いのかを薬剤投与前に判定・予測し、適切 な投与量を決定するための研究です。個々人にとって最適な治療法を実現しようとする「テーラーメイド医療」の実現に向け研究を進めています。
参考写真

8)その他、多くの研究を展開中
■研究テーマ

*内容は文字をクリックすると確認できます。

手術部の効率運営
術後の鎮痛薬必要量の検討
(心臓のバイパス術後に手術室で抜管できる濃度、至適濃度)
気管挿管の安全性向上
β遮断薬の有効利用
硬膜外麻酔の安全性向上
小児麻酔の安全性向上
各種デバイスの有効性調査
麻酔薬の性差および個人差の解明/薬物血中濃度の解析
*臨床研究「術前動脈硬化が麻酔後の血圧変動に与える影響」
*臨床研究「褐色細胞腫とランジオロールの使用量」
*臨床研究「人工心肺とHESによる腎機能への影響」
*臨床研究「帝王切開術後鎮痛方法と育児」
*臨床研究「Intraoperative MRI 手術におけるMRI 使用による発熱作用の検討」
*臨床研究「心臓手術中の血糖値に関する後ろ向き研究」について
*臨床研究「大動脈弁置換術の人工心肺離脱時の心室細動に対する薬物治療の効果」について
*臨床研究「小児の術前のケアによる不安の評価」
*臨床研究「手術麻酔を受ける病的肥満患者数と麻酔方法の検討」
*臨床研究「周術期の頻脈性不整脈に対するランジオロールの治療効果の検討」
*臨床研究「成人心臓手術におけるランジオロール投与による副作用の検討」
*臨床研究「胸部外科手術術前の心エコーにおける左室長軸方向ストレインと術後の心房細動発症率の関係」

 

(研究一覧:猪股准教授担当分