病気について

肺がん

咳、血痰などの症状がでることがありますが、腫瘍がかなり大きくなるまで症状がないことも少なくありません。肺がんが疑われるときは、レントゲン、CT、PET、MRI検査などで腫瘍の大きさ、悪性度、広がり(進行度、ステージ)を調べます。また、気管支鏡検査やCTガイド下針生検により腫瘍から細胞を採取して肺がんの種類を調べます。肺がんの種類には、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌などがあります。

肺がんの種類、進行度(ステージ)によって、手術・化学療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)・放射線治療(陽子線治療を含む)などで治療を行います。通常、ステージ Ⅰ~Ⅲ期の場合に手術を行います。

手術を行う場合には、術前検査(血液・尿検査、心電図、心臓超音波検査、負荷心電図、呼吸機能検査、肺血流シンチ等)や全身状態(体力、呼吸状態、併存疾患)などを踏まえて手術が可能かどうかを判断します。

入院は手術の1日前~3日前で、退院は手術後5~10日です(状況によって前後することがあります)。手術は胸腔鏡下で行います。肺がんに対する標準的な手術方法は肺葉切除+縦隔リンパ節郭清術です。但し、肺がんの悪性度、進行度(ステージ)、全身状態に応じて個々に検討しています。

退院後、1~3週間の間隔で通院となります。手術して約1か月後に病理検査(切除した腫瘍の顕微鏡による検査)の結果がでます。病理結果に応じて、その後の治療方針を相談いたします。ステージⅠB以上の場合は、肺がんの再発率を少しでも低くするために、術後補助化学療法(術後に行う抗がん剤治療)をお勧めすることがあります。

本院の肺癌術後の治療成績(5年生存率)

ステージ 5年生存率
0   100%
A 92.7%
  B 77.3%
A 74.8%
  B 70.0%
A 51.9%
  B 0%
  24.6%

肺がんについて

縦隔腫瘍

縦隔とは、右肺と左肺の間にある体の部位のことです。この部位に発生した腫瘍を縦隔腫瘍といいます。縦隔腫瘍には胸腺腫、胚細胞性腫瘍、のう胞性腫瘍、神経原性腫瘍、胸腺癌などがあります。CT、PET、MRI検査などで腫瘍の大きさ、性状、浸潤の程度を検査します。治療の多くは手術によって腫瘍を取り除きます。

入院は手術の1日前~3日前で、退院は手術後5~10日です(状況によって前後することがあります)。手術は胸腔鏡を用いて行います。但し、腫瘍が大きい場合や血管に浸潤している場合などは開胸手術で行うことがあります。

退院後は1~3週間の間隔で通院となります。手術して約1ヶ月後に病理検査(切除した腫瘍の顕微鏡による検査)の結果がでます。病理結果に応じて、その後の治療方針を相談いたします。浸潤性胸腺腫や胸腺がんでは再発率を少しでも下げるために、放射線治療を追加することがあります。

気胸

気胸とは肺から空気漏れが生じるなどの原因で肺の外に空気が溜まってしまう病気です。気胸になると肺は縮んでしまい呼吸状が苦しくなり、さらに重症化すると心臓に影響がおよんで血圧が下がってしまうことがあります。

気胸の原因には、肺の表面が薄く膨らんで破れてしまうこと(ブラ/ブレブの形成)や、肺気腫・間質性肺炎といった肺の病気によって引き起こされてしまうことが挙げられます。また、女性の場合には月経に合わせて気胸が起きることがあります。

症状としては胸の痛み、咳、息苦しさ などで、レントゲン検査で診断します。肺の縮む程度が軽度の場合は自然に治ることもありますが、肺の縮む程度が大きい場合には体の外に空気を出す必要があるため、胸腔ドレーン(管)を胸の中に留置する必要があります。

また、肺に生じた空気漏れは自然に治ることがありますが、空気漏れの程度や原因によっては自然には治らないことがあり、手術による治療が必要となることがあります。さらに、気胸は一旦治っても再発することが多く、繰り返す場合には手術で肺の破れる部位(破れやすい部位)を修復する必要があります。

手術は胸腔鏡下で行います。空気漏れの原因となっている部位を修復(切除、縫合)し、修復した部位を中心にして肺表面に補強用のシートで覆います。退院は手術後3~7日です(状況によって前後することがあります)。退院後は1~3週間の間隔で通院となります。

膿胸

膿胸とは肺炎や胸膜炎、気胸などが悪化して胸の中に膿が貯まってしまう病気です。抗生物質等の薬だけでは治ることが難しく、胸腔ドレーン(管)を胸の中に留置して胸に貯まった膿を体の外に出す必要があります。それでも治らない場合は手術で胸の中の膿を除去するなどの手術が必要となります。1回の手術では治りきらない時もあり、複数回の手術を行い、治療期間は長期間(数週間~数ヶ月)に及ぶことがあります。

他、当科では転移性肺腫瘍、胸膜中皮腫、胸膜腫瘍、胸壁腫瘍、胸膜炎、縦隔炎、重症筋無力症、炎症性肺疾患、のう胞性肺疾患、気道狭窄、手掌多汗症、胸部外傷などの治療を行っています。

本院の手術件数(年次別)

病名 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
肺癌 159 138 151 159 137
転移性肺腫瘍 36 37 31 27 41
良性肺腫瘍 10 4 3 8 10
縦隔腫瘍 30 24 28 13 14
胸膜腫瘍(胸膜中皮腫など) 0 0 4 1 4
胸壁腫瘍 6 5 5 4 4
気胸 52 32 44 39 41
重症筋無力症 0 1 6 2 4
膿胸(胸膜炎) 9 15 8 4 9
炎症性肺疾患(真菌症など) 2 1 3 0 2
気道狭窄(気道ステント) 7 4 2 5 7
その他 10 12 24 20 35
合計 321 273 309 282 308