当研究室では、臨床に直結した研究を行っております!

肺癌の形態に立脚した分子標的の探索

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肺癌は本邦での悪性腫瘍の死亡数の第1位を占め、治療法の発達にもかかわらず5年生存率は15%程度と予後不良です。ですが、近年では、EGFR,ALKなど相互排他的なドライバー変異への分子標的薬剤、あるいは、免疫チェックポイント阻害剤などが一定の効果をあげるようになりました。組織形態だけではなく、癌の生物学的特性(転移能、薬剤感受性)を反映した分類が求められており、現在、ゲノム、臨床、病理形態(と分化形質)の情報を統合した解析が進められようとしています。しかし、データサイエンス主導のためか、よくみてみますと、実際のデータのもとになる病理形態の情報は、せいぜい、組織型、分化度程度とPoorであり、真に統合的と言えません。我々病理医にしか、わからないものをもっと発信すべきです。我々、病理医は、癌のheterogeneityを熟知しており、背景病変、微小病変、早期病変、進展過程を、個々の症例を大事にしながら深く追求することも、あるいは、多数症例を使って、広く解析することも可能です。 こうした、病理学的観察や経験の蓄積に基づいたrealityのある解析は、我々病理医にしかできません。私たちは、肺癌の形態学に立脚した、癌の発生・進展に関わる分子についての研究を進めています。このような研究成果を丹念に積み上げてゆくことによって、癌の統合的理解に基づいた合理的な分類を確立することを目標として努力しています。もちろん、肺癌だけでなく、様々ながんにおける分子標的の探索を目指します。

癌・間質相互作用、微小環境、筋線維芽細胞

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癌の浸潤、転移、増殖といった生物学的な特性は、癌の遺伝子異常のみで決定されるものではなく、癌細胞のおかれた微小環境 や間質細胞との相互作用の強い影響下にあると現在では考えられています。がん細胞が微小環境や間質細胞によってどのように制御されている のか分子レベルで明らかにすれば、その知見は癌の分子診断や分子標的治療に近い将来応用できると期待されています。癌の組織中にみられる 線維芽細胞は、α-平滑筋アクチンを発現しており、筋線維芽細胞の性質を持っていることが報告されています。このような癌組織中の線維芽 細胞は、CAF、Cancer-associated fibroblastと呼ばれることがあります。線維芽細胞は均一な細胞手段のように思われてきましたが、線維芽細胞における特定のバイオマーカーの発現が予後因子になる ことが、いくつかの癌で報告されています。肺腺癌についてもMET陽性の線維芽細胞がみられる症例は、他の症例に比し、予後不良でした (Tokunou, Niki et al, Am J Pathol 2001; 158: 1451-1463)。現在、私たちの研究室では、癌細胞と筋線維芽細胞の相互作用を詳しく調べるため、3次元ゲル内培養や免疫不全動物へのXenograft modelを用いて実験を進めています。

臨床病理学的研究

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臨床検体、細胞株を用いた解析、実験を行い、癌の分子標的を、分子と形態の両面から探ります。

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