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肝胆膵疾患

肝疾患

肝細胞癌

肝細胞癌に対しては、消化器外科、放射線・IVR科、放射線腫瘍科と密に連携し、個々の症例に応じて、手術、ラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、陽子線治療、全身薬物療法(アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法、分子標的薬治療)を選択しています。病状によっては、複数の治療を組み合わせた集学的治療も行っています。
RFAは基本的には3cm以内、3個以内の肝細胞癌を適応としております。症例に応じてTACEと組み合わせて焼灼をすることもあります。最新のGPS機能・造影超音波機能を活用し、精密なアブレーションを心がけております。(RFA診療実績:2020年42件、2021年49件)

切除不能進行肝細胞癌に対しては、2020年9月にアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法が保険適応となり、2021年10月までに22例に対して導入しました。「切除不能進行肝細胞癌に対するアテゾリズマブ、ベバシズマブ併用療法の有効性と安全性に関する観察研究(R02-353)」を立ち上げ、症例を集積中です。
TACEについては放射線・IVR科と連携し、ジェルパートを破砕した新規治療(RAIB-TACE)の特定臨床研究を開始しました。「Up to 7基準外の肝細胞癌に対するRAIB-TACEの有効性試験」および「アテゾリズマブ、ベバシズマブ併用療法不応・不耐の肝細胞癌に対するRAIB-TACEの有効性試験」を行っております。詳細は下記リンクをご参照ください。

「Up to 7基準外の肝細胞癌に対するRAIB-TACEの有効性試験」

「アテゾリズマブ、ベバシズマブ併用療法不応・不耐の肝細胞癌に対するRAIB-TACEの有効性試験」

食道胃静脈瘤

食道胃静脈瘤に対しては、内視鏡治療を基本とし、結紮術・硬化療法を待機例及び緊急例に施行しております。内視鏡治療が困難な孤立性胃静脈瘤に対しては放射線・IVR科と連携し、バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)も施行しております。
食道胃静脈瘤について、2020年より下記の観察研究を立ち上げ、症例を集積中です。
「肝細胞癌門脈腫瘍栓に対する陽子線治療が食道胃静脈瘤に与える影響に関する観察研究(R02-049)」
「消化管静脈瘤に対するInterventional Radiology (IVR)の有効性と安全性に関する観察研究(R02-236)」

NAFLD(Non-alcoholic fatty liver disease)/NASH(Non-alcoholic steatohepatitis)

NAFLDの有病率は約25%であり最も頻度の高い慢性肝疾患である.NAFLDは肥満,糖尿病,脂質異常症などの生活習慣病,代謝障害を背景病態にメタボリック症候群の肝臓における表現型として脂肪性肝障害をきたすものである.最近の我が国には,BMIが基準範囲にあるNAFLDも認められ,lean NAFLD,または,non-obese NAFLDと呼ばれ,高齢者層を中心に増加している.NAFLDは肝臓の病気ではあるが,内臓脂肪蓄積肥満やサルコペニア(骨格筋減少)などの体組成の異常が重要な病態因子として,その発症とNASHへの進展に重要な影響を与える.NAFLD/ NASHの治療には食事と運動療法の他に高いエビデンスを有する治療方法はない.

附属病院では2015年につくばスポーツ医学・健康科学センター内に肝臓生活習慣病外来を開設した.当外来では,NAFLDの生命予後に影響を及ぼす組織病変は肝線維化であることより,診療ガイドラインに従い,FIB-4 indexやNAFLD fibrosis scoreの線維化スコアリング,超音波エラストグラフィーを活用した線維化の進行したNASH高リスク群の絞り込みを実施している.絞り込まれたNASH患者に対して,管理栄養士と運動トレーナーによる生活習慣の改善に向けた食事・運動指導の診療を継続し,定期的な体力・体組成の測定,画像検査による病態改善の評価をおこなっている.当外来に通院する患者総数は年間約250名に上る.

胆膵疾患

主な対象疾患

膵臓がん

胆道がん
(胆管がん、胆嚢がん)

膵嚢胞性腫瘍
(IPMNなど)

急性膵炎

膵仮性嚢胞 /
被包化膵壊死

自己免疫性膵炎 /
IgG4硬化性胆管炎

慢性膵炎

膵神経内分泌腫瘍

胆管結石 / 肝内結石 /
治療困難結石

急性胆管炎

急性胆嚢炎

十二指腸乳頭部腫瘍

対象とする代表疾患

膵臓がん

膵臓がんは現在、国内のがん死亡率の4位となっており、早期診断は困難なため進行した状態で発見されることが多く、生命予後の厳しい腫瘍の代表です。当院では、疑わしい症例に対して超音波内視鏡検査(EUS)や連続膵液細胞診検査(SPACE)を積極的に行い、可能な限りの早期発見を目指しています。また、当院の肝胆膵外科医師や放射線科医師と定期的にカンファレンスを行い、手術や化学療法、化学放射線療法まで最短で到達できるような体制を整えています。病状によっては放射線治療の一種である陽子線治療も併用しています。また超音波内視鏡などで採取した腫瘍組織から遺伝子情報を抽出し、その後の治療につなぐ検査(がん遺伝子パネル検査)も行なっております。

胆道がん(胆管がん、胆嚢がん)

胆道がんは肝臓からの排出される胆汁を流す胆管や胆嚢といった臓器から発生します。多くの場合、胆管を閉塞することにより黄疸や肝機能の悪化を来します。
胆道癌の診断や治療にはまずは経口的に内視鏡を挿入して胆汁の流れを再開させ、肝機能や症状を改善させるとともに、組織を採取して診断をつけたり、どこからどこまで腫瘍の浸潤があるのかの範囲を診断したりすることが重要となります。 EUSやERCP、経口胆道鏡による範囲診断、組織生検を行い、目的に応じた胆道ドレナージ術を行っております。治療方針については肝胆膵外科医と密接に連携をとり判断し、病状や全身状態に応じて手術や化学療法などを提案しています。

膵嚢胞性疾患

画像診断技術の向上によって検診などで膵臓の嚢胞性病変を指摘される方が増加しています。膵嚢胞性疾患の多くは膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と呼ばれる良性の腫瘍ですが、時として悪性化することや、膵臓がんを併発することが知られています。当科ではEUSを含めた精査、及び必要に応じて手術を含めた治療の提案をさせていただいております。また、当院に隣接するAIC画像検査センターと連携し、ガイドラインに沿った細やかな経過観察が行える体制を整えています。

膵仮性嚢胞 / 被包化膵壊死

急性膵炎後の膵局所合併症として、膵の周囲に液体や壊死組織の貯留(液体貯留を膵仮性嚢胞、壊死組織の貯留を被包化膵壊死と呼びます)が見られることがありますが、それらが感染し発熱などの症状が出現することがあります。近年、これらの病態に対して超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ術が治療の主流となり、高い成功率が報告されております。この治療で不十分なケースにおいては、内視鏡を用いた壊死組織除去を行ないます(内視鏡的ネクロゼクトミーと呼びます)。当院でも病状に応じてこれらの処置を積極的に行なっており、近隣の施設からも多くの患者さんをご紹介いただいています。

総胆管結石 / 肝内結石 / 治療困難結石

総胆管結石は胆膵領域における代表的疾患の一つで、内視鏡を用いた治療(ERCP)が一般的に行われています。時として、大結石や積み上げ結石、肝内結石などは内視鏡治療が困難な場合があり、通常のERCPとは異なる対応が必要な場合があります。当院では、胆道鏡という胆管内に挿入できる細い内視鏡を用いて、衝撃波で結石を破砕しながら除去をすすめています。また、胃や膵臓・胆管の手術をされた再建腸管の方の胆管結石は小腸バルーン内視鏡という非常に長い特殊な内視鏡を使用して、結石治療を行なっています。

当科で行なっている胆膵内視鏡検査および処置

表は右にスクロールしてご覧になれます。

 2019年度(件)2020年度(件)

ERCP

408

411

    結石除去術

89

87

    悪性胆道ドレナージ

211

183

    バルーンアシスト下ERCP

49

36

    経口胆道鏡

9

10

EUS

235

250

    EUS-FNA

100

109

    EUS下ドレナージ術

7

16

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)

ERCP は、内視鏡を口から入れて十二指腸乳頭部まですすめ、胆管や膵管に造影剤を直接注入してレントゲン写真をとり、胆のう・胆管や膵管の異常の有無を調べる画像検査ですが、同時に、胆道がんの診断やがんによる胆道閉塞の治療、胆管結石の治療にも応用されています。ERCPは、十二指腸乳頭から胆管・膵管にカテーテルその他の処置具を挿入するのに高い技術を要します。時として、急性膵炎などの偶発症が重症化することもあり、処置中および処置後は慎重な対応を心がけています。黄疸や胆道感染症に対して緊急で行われることが多く、処置のタイミングが遅れると致命的にもなり得るため、迅速な判断も必要です。 ERCPに関連する処置として、十二指腸乳頭部切開術や胆管結石除去術、胆道ドレナージ術(胆管ステント留置)、膵管ドレナージ、経口胆道鏡などがあります。

EUS(超音波内視鏡検査)/EUS-FNA(超音波内視鏡ガイド下穿刺)

超音波内視鏡(EUS)は、胃カメラの先端に搭載された超音波装置(エコー)で、消化管の内腔から周囲組織・臓器などの診断をおこなう検査です。EUSは体表からのエコー検査と異なり、胃や腸の中の空気や腹壁、腹腔内の脂肪、骨がエコーの妨げになることがなく、目的の病変(特に膵臓や胆道)の近くから観察が行えるため、より詳細に病変の情報を得ることができるため、膵臓・胆道(胆嚢・胆管)病変に有用な検査です。また超音波内視鏡を用いて病変の一部を採取すること(EUS-FNA)もできるため、質的診断が可能となります。EUS-FNAは膵臓や胆嚢・胆道の病変に限らず、腹腔内腫瘍・リンパ節や腹水、縦隔内の病変などの幅広い臓器の病変に有用です。

EUS下ドレナージ術

EUS-FNAで培ったEUS下穿刺の技術と、ERCPで培ったドレナージ・ステント留置技術を生かして、これまで経皮的に行っていた様々な病変のドレナージを消化管から行えるようになってきました。これらは、ERCPによるステント治療が不向きな病態で、経皮的なドレナージの最大の欠点である“体外にカテーテルが出る状態”を回避しうる新たなドレナージ方法として注目されています。
主な対象として、膵仮性嚢胞/被包化膵壊死の感染などの症状が出現した際に、経消化管的にドレナージを行います。また、ERCPが困難な病状において胆道ドレナージが必要となった場合も、経消化管的に胆管や胆嚢にステントを留置しています。

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