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消化管疾患

当科の消化管診療の特徴は、各分野の専門家が揃っていることにあります。これまで先代の教授が築いてこられた臨床腫瘍、特に消化管腫瘍の分野は、外科、放射線科との良好なコミュニケーションのもと、積極的に化学療法を導入しており、複数の多施設共同研究に参画しております。また、若手の積極的な指導のもと、内視鏡検査、治療、小腸内視鏡検査などを専門的に実施しております。

当科では、2021年4月より着任された土屋教授を中心に、新たな消化管診療の取り組みとして、炎症性腸疾患(IBD)の診療体制整備を行なっております。IBDは腸に慢性の炎症が生じる原因不明の難病であり、日本を含むアジアで患者数が急増しております。IBDは、潰瘍性大腸炎とクローン病に分かれます。潰瘍性大腸炎は、直腸から口側に向かって、連続性、びまん性に、粘膜の炎症が進展する大腸炎です(図1)。一方、クローン病は、小腸または大腸に非連続性に分布する腸炎です。縦走潰瘍(図2)や敷石像が特徴で、消化管の全層を侵すため、腸管狭窄や瘻孔を来すこともあります。

平成30年度難病情報センターの集計によると茨城県の潰瘍性大腸炎患者数は2,846人(全国11位)、クローン病では841人(全国13位)と報告されております。当院ではこれまでも質の高いIBD診療を行ってきておりましたが、県内にはIBD診療と研究をリードする専門施設がありませんでした。そこで、当科では、茨城県でも専門性の高いIBD診療を提供できるよう下記の取り組みを行なっております。

国際的に認知されているIBD疾患活動性指標の活用

国際的に認知された疾患活動性指標を導入することは、日々の診療レベルの向上だけでなく、統一性のある臨床データ集積のためにも重要です。

そこで、臨床的活動指数として、潰瘍性大腸炎ではSimple Clinical Colitis Activity Index (SCCAI) (表1)、クローン病ではHarvey-Bradshaw Index (HBI)(表2)を電子カルテの書式記載ツールで入力できるようにしました。

また、内視鏡スコアに関しても、潰瘍性大腸炎では、Mayo endoscopic subscore (MES) またはUlcerative Colitis Endoscopic Index of Severity (UCEIS) (図3)、クローン病では、Simple Endoscopic Score for Crohn’s disease (SES-CD)(図4)を導入しました。代表写真をラミネート加工して、内視鏡の各ブースに置かせていただき、内視鏡情報管理システムで入力可能としています。

さらに、病理部のご協力のもと、潰瘍性大腸炎の病理評価指標として従来使用していたMatts gradeを、IBD論文でしばしば引用されているGeboes score(表3)に変更していただきました。

MR entero-colonography(MREC)の導入

放射線科のご協力のもと、クローン病の小腸病変評価に欠かすことのできないMREC(図5)を当院でも実施できるよう調整いただきました。

現在までに、茨城県でMRECを実施できる施設は当院だけであり、深部小腸病変を十分に評価した上でのクローン病診療を可能としています。

IBD合同カンファレンスの実施

当院外科、小児科や関連病院の消化器内科との合同カンファレンスを開始しました。IBD外来において、早期の治療介入がかなわず、初診から手術をご案内しなくてはならないケースが増えてきています。そこで、緊急手術にも対応いただけるように、当院の大腸肛門外科の先生とは、月一回、患者情報を共有するようにしております。中学生や高校生も、しばしば紹介されますので、小児科の先生方にも、合同カンファレンスに参加いただいております。

また、地域連携を十分に図れるよう、関連病院ともIBDカンファレンスを開始しております。今後、関連病院の先生方に気軽にご参加いただけるように、オンライン形式で開催しようと計画しております。

このような取り組みを通じて、当院のIBD診療スタイルを、県内の関連病院とも共有することができれば、IBD診療の統一化が進むことになり、オール茨城体制でのIBD診療レベルの向上、さらには、茨城県のIBDレジストリーデータ構築に向けた第一歩になると考えています。

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