医学系における研究

臨床医学域

臨床医学分野では、多数の教員がいくつもの研究グループを構成し、さまざまな疾患の原因・発症機序・病態の解明と、新しいより優れた診断・治療・予防法の確立をめざして研究を行っています。

最先端の臨床医学研究

臨床医学分野においては、近年飛躍的な進歩を遂げている分野の技術を取り入れ先進的な臨床研究を進めています。分子病態解析、遺伝子解析などの手法は、すでに研究のみならず日常の検査としても広く取り入れられ、各個人の病状に応じた最適な治療(テーラーメード医療)を提供することに貢献しています。また、3D −コンピューター断層撮影(CT)などの新画像技術、カテーテル・アブレーションによる不整脈治療、内視鏡・ロボット支援手術、がんゲノム医療など、ハイテク機器を用いた研究成果は、すでに臨床応用されています。

エキスパートパネル

筑波大学附属病院のエキスパートパネルの様子。医師だけでなく病理を扱う臨床検査技師、看護師、薬剤師、遺伝子カウンセラーなど多職種のメンバーが参加している。2020年4月からWeb会議になっている。

また、がん、エイズ、遺伝性疾患、自己免疫疾患などの難治性疾患にも積極的に取り組み、臓器移植、細胞療法、遺伝子治療、再生医療などの分野で新しい治療法の開発をしています。また、筑波大学が開発された当初から力を入れている陽子線治療や、近年開発された脳腫瘍に対する中性子捕捉療法は全世界のトップリーダーとして牽引しています。  がん治療法の開発においては一定の治療計画に基づいた治療成績を継続的に集積し、データベースを構築していくことが極めて重要です。このような信頼性の高いデータベースを構築するために、附属病院ではいくつもの先進的な質の高い臨床試験が実施され、新しい治療法の開発に寄与しています。附属病院は2019年9月にがんゲノム医療拠点病院に指定され、がんゲノム外来を開設しました。ここでは病理組織からDNAを抽出し、遺伝子パネル検査、専門家会議(エキスパートパネル)を経て患者さんに適切な治療法の選択に役立てるがんゲノム医療医療を実践するとともに、国立がん研究センターのデータベース構築に協力しています。 がん以外にも、動脈硬化、糖尿病、高脂血症、高血圧 , メタボリック・シンドロームなど様々な生活習慣病に対して、脂質に関する新しい概念に基づいて動物モデルを作成、病態メカニズムを解明し、予防法・治療法に繋げるオリジナリティの高い研究に力を入れています。

図:生活習慣病の新しい概念:脂質の量と質
独自の脂質代謝研究から肥満、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、認知症のメカニズム解明と新しい治療法の開発を目指しています。臓器や細胞内の脂質の量を調整する遺伝子の転写因子、脂肪酸の質を制御する酵素、栄養状態を感知するセンサーを発見しました。これら因子のエネルギー代謝の制御メカニズムと生活習慣病との関連を解明し、新しい治療法に繋げます。新しいバイオロジーが潜んでいます。
内分泌代謝・糖尿病内科

世界へ――つくばの研究ネットワーク

開学以来、医局講座制を廃止しているため、歴史的に学問分野にとらわれない多彩な共同研究が行われています。基礎医学や社会医学との共同研究はもちろん、体育科学と融合したスポーツ医学研究は、医学と体育の双方を持つ国内唯一の本学ならではのものです。また、研究学園都市つくばには医学以外の研究施設が多く、グローバリゼーションの流れの中で、宇宙医学、環境医学、国際医学協力など、広い視野にたつ学際的研究が展開されています。

高度先進医療の場−−筑波大学附属病院

臨床医学分野における活発な研究活動は、附属病院における高度な診療に反映されています。研究を支える多数の教員は、学生や研修医の教育にあたるとともに、地域医療への貢献および高度先進医療の推進をめざして、診療にも従事しています。また、「つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO)」が中心となり、筑波大学および周辺研究施設で得られた研究成果を、より迅速かつ効率的に臨床の場に還元する橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ)に取り組んでいます。

 

図:筑波大学附属病院におけるがんゲノム医療の流れ

ゲノム診療

 

図:画像による皮膚腫瘍 AI 診断システム

人工知能(AI)の分野はこの数年で劇的な進歩を遂げています。皮膚科グループは 2016年からこの CNN を用いた皮膚腫瘍の AI 診断システムの研究を行っています。現在はこのAI 判定器を使ったアプリ開発を行っており、社会実装に向けて研究を行っています。

AI

保管されている皮膚腫瘍の画像約6,500枚を用いて、図にあるようにCNNを用いたAIを学習させて判定器を作りました。CNNは従来の機械学習と違い、途中でどのようなプロセスを経ているかが分からない(ブラックボックス)ことが特徴ではありますが、画像のどの部分に着目しているかを可視化する技術も最近出てきています(図中のGrandCamやt-SNEなど)。この判定器の性能を評価するため、皮膚腫瘍の画像を分類するテストを医師とAIでその正答率を比較したところ、AIの方が皮膚科専門医より正確に判定できることが分かりました(図下・左)。