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筑波大学

大学院生募集Recruitment

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大学院生募集

社会精神保健学分野では、大学院生を募集しています。

現在所属している学生は、医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、臨床心理士、保護司など,専門家として精神保健の現場の第一線で働きながら、週数回集中して大学に通い研究活動を行っている社会人大学院生が多数を占めます。一方で純粋に学部から大学院に進学して研究活動に専念する大学院生もおり、さまざまなタイプの学生が自分のペースで研究に取り組んでいます。

学位を取得した学生は、大学に教員として赴任する者、研究所に研究員として就職する者、再び現場の第一線に復帰する者とさまざまですが、それぞれ大学院で取り組んできた研究を何らかの形で新しい自分のキャリアに生かしています。

本研究室で研究を行うには,下記の2つの方法があります。

1.人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻(3年制の博士後期課程)への入学

2.人間総合科学研究科フロンティア医科学専攻 ヒューマン・ケア科学コース(修士課程)への入学

さまざまな心理的な問題を持つ人に対する実践的な評価・援助や、社会的観点からの制度・援助体制の問題に関心をお持ちの方、お気軽に研究室までお問い合わせください(左記研究室メールアドレスまでご連絡下さい)。特に受験を考えておられる方は、必ず事前にご相談ください(入試は8月と2月に開催されますので、時期も考慮しながら早めにご連絡ください)。

お問い合わせ頂いた後は、教員との相談を兼ねて一度ゼミ見学にお越しいただくことをお薦めします。当研究室では毎週火曜の夕刻(おおよそ17:00-20:00くらいまで)に大学院生向けのゼミを開催しております。また進学希望者対象のオープンキャンパスが、毎年それぞれ修士課程(4月と6月の2回)と博士課程(6月に1回)で開催されておりますので、ぜひそちらへの参加もご検討下さい(詳細は各専攻のページにてご確認下さい)。

      
(2012年合宿のようす)

研究室OB・OGによるショートエッセイ

ヒューマン・ケア科学で学ぶこと 
玉井紀子(2012年度博士修了)
(「ヒューマン・ケア科学専攻への招待」より抜粋)

 私は、対人援助の現場に心理の立場から10数年関わった後、筑波大学大学院のヒューマン・ケア科学という研究の場に足を踏み入れました。自分がこれまで現場でやってきたことを、少し距離をとって眺めてみる、整理する、新たな方向性を探る、動機としては様々なものがあったように思います。現場と一口に言っても、医療、教育、福祉、司法・矯正など、いずれも少しずつ関わってきた私にとっては、どこを自分の足場にするのかを決めるいい機会でもありました。

 福祉現場である児童養護施設での心理職としての経験は、虐待から生じる子どもの行動や、それを取り巻く環境への関心へと結びつきました。現在、児童養護施設の入所児童の半数以上が被虐待児だと言われています。施設という集団生活にあって、成育歴の影響や施設自体の環境から、行動化や精神症状を呈する子どもたちも増え、「保護」をするという従来の目的だけでは、対応が難しくなっています。

 そんな中で児童養護施設での心理職の役割とは何かを考えたとき、心理療法によって「治療をする」という限定されたものではなく、子どもたちの日常生活いかに支え、どのような形で子どもの成長や養育に関わって行くか、そして社会に出た後の生活を見据えた包括的な対人援助アプローチの必要性を感じるようになりました。

 更には、他職種の方たちとのチーム援助や連携など、対象となる子どもやその家族の抱えている課題が複雑になればなる程、多くのマンパワーが求められるとすれば、一体どのようなケア体制が望ましいのか?なぜ、ケアが上手く行っていないのか?その現場に1つの視点やささやかな援助の一端として、心理の立場から関わりを持つということは何か?など多くの疑問や悩みが生じ、とにかく“?”だらけの中にいたように思います。

 研究室で研究を進めること、大学院で学ぶことで、それらの全ての“?”が解けた訳でも、明確な答えが浮かび上がった訳でもありません。むしろ、他分野の先生方の講義や研究ゼミでのディスカッション、研究仲間との交流を通して様々な領域からの多様な視点、現在の動向を知ることで、こんな研究領域があったのか、その課題は自分が関わっている現場や研究ではどうなっているのだろうかなど、“?”は増えたのかもしれません。

 しかし、これらの多くの“?”について考え、探り続けることの意味深さや、そのこと自体がとても貴重で贅沢な体験であることを感じています。それらの多様性から、考える視野の広がりが生まれ、これまでに積み上げられてきた研究の方法論と客観的データが示す証拠たちによって裏付けされていく現象の可能性を推察し、別の新たな角度からの検討材料を見出していくことは、歯痒いながらも気持ちの充実感を味わうことに繋がっていると思います。

 現在、私は児童養護施設で生活し、退所していく子どものための、社会に自立をすることを念頭においたケア(リービングケア)について研究をしています。児童養護施設で生活職員として働く人たちや、以前に児童養護施設で生活した経験のある人たちを対象として、先行研究や現場での経験で得た知識をもとに質問紙調査を行い、退所に向けたケアの実践内容や、ニーズ、施設や行政の体制などにも目を向けて検討しています。現場での実践においては、施設を出た後に、援助が途切れてしまわないように、アフターケアとしての対応も含めて自活生活へ向けた様々な取り組みが行われています。しかし、これまでの研究では、海外も含め、ケア制度の下で生活していた人のその後の生活は必ずしも順調であるとは言い難いことが示されており、日本では実証研究が殆ど行われていないのが現状です。

 児童養護施設での生活を経験した人たちのその後の生活や心理的側面にもアプローチしつつ、家族と離れて暮らすことになった子どもたちが直面している課題を示し、児童養護施設が何を提供できるのか、必要な制度や施設の体制は何か、現場へ研究から還元できることを探っています。まだ自分の研究領域が途上にあることを意識しつつ、日々バタバタした児童養護施設という現場の可能性を信じつつ、研究と実践に格闘している最中です。

 私が所属するゼミには、他分野の方も出席しています。お互いに重なりあった研究領域について意見交換したり、研究に対象者として協力することもあります。社会人としてフルで仕事を持っている方も多く、時間の使い方にはとても憂慮しますが、様々なヒューマンケアに関わる人たちが行き来し、その利点を活かしながら学ぶことができる場だと思っています。

地域の声を聴く〜精神障害者当事者活動の展開地域で生きた5年間〜
種田綾乃(2011年度博士修了)
(「ヒューマン・ケア科学専攻への招待」より抜粋・イラストも本人による)

 新千歳空港からバスで4時間、太平洋沿岸の小さな町に、積極的な地域活動を展開する精神障害者の当事者団体があります。「精神医療の先駆的な実践」と称されたこの団体に興味を持ち、大学生時代、私は見学者としてこの団体を訪れ、町の教会でメンバーと寝食を共にし、交流を重ねました。

 大学院に進学し、研究テーマを模索し大学周辺の障害者関連施設で障害者の地域生活支援に携わる中で、社会に根強く存在する障害者に対する社会的偏見に直面します。―精神障害者による積極的な活動の展開されるあの地域では、住民と精神障害者とがどのように関係性を築いているのだろう―先駆的な一地域の実情に、今後の他の地域での活動にも通じる「何か」を得たいという思いから、研究は始まりました。

 地域の実態を知るための第一段階として、地域住民に対する質問紙調査を実施し、精神障害者との接触と偏見の実態を明らかにすることにしました。経費削減・回収率の確保のため、そして何よりも自らの足で地域を歩きたいという思いから、住民2000名に質問紙を直接配付することしました。

 約一ヵ月間、当事者団体の共同住居の一室に居住し、質問紙の詰まった大量の段ボール箱とともに眠り、毎日一万歩を超える道のりを歩き質問紙を配付しました。対象者から直接厳しい言葉を投げかけられることも、山道を必死で登った末、地図上ではあるはずの住宅群が幽霊屋敷となっていたこともありました。苦難が大きいほどに、調査中に温かい声をかけてくださる方の存在が、一歩を重ねる原動力でした。

 調査での滞在中は、図書館や喫茶店等、住民の集まる場に積極的に足を運び、住民の会話に耳を澄ませました。地域の日常の中に、当事者団体の「見学者」という立場では見えていなかった現実、地域の外には伝えられていない現実が溢れていました。

 質問紙調査でのもっとも大きな収穫は、住民との個人的なつながりが生まれたことです。配付中に立ち寄った喫茶店のオーナーと、この地域の当事者活動の現実について、閉店後まで話し込み、夕食まで御馳走になることもありました。多くの出会いに支えられながら配付を終え、お世話になった方々に、感謝の言葉を添えた手製のポストカードを手渡して、調査地を発ちました。

 質問紙調査の結果は、地域の厳しい現実を露にしていました。精神障害者の理想郷として報道等で取り上げられている地域の実情は、他地域以上の厳しい偏見の中で存続していることが見えてきました。―どうやって関係性が築けばいいのか、今の状況をどうにかできないものか・・―

 滞在中に出会った住民の苦悩は、一地域としての問題を超えた問いを投げかけているように思えました。その問いへの答えを求め、当事者団体と継続的な関わりを持つ住民の語りから、「住民はどのように精神障害者と関係性を構築していくのか」という実態を明らかにしていくことにしました。

 協力者が十分に集まるのか、研究の到達点はどこにあるのか・・・先行きの見えない不安を抱えながら、再び調査地に足を踏み入れた私を、住民の方々は家族のように迎え入れてくださりました。自身の贈ったポストカードが、店頭に飾られ、ブログに掲載され、「あのイラストを描いた人」としての存在が地域の中に築かれていました。研究計画の余白から発生した人とのつながりを頼りに、調査は展開していきました。「こんなこと、あなただから話すけど・・」と、インタビュー中にメンバーとの関わりにおける苦悩を語られた方、涙を流しながらメンバーへの熱い思いを語られた方・・・住民の声なき声に向き合った日々でした。

 調査での滞在中は、喫茶店の仕事を手伝わせていただきながら、喫茶店の一室に寝泊まりし、オーナーと共に地域生活を送りました。喫茶店ではさまざまな住民との出会いがあり、自家製の料理を差し入れてくだった方や夕食に招いてくださった方、観光に連れて行ってくださった方もいました。極寒の季節にもかかわらず、多くの人々の温もりの中での調査でした。複数回の滞在によるデータ収集を完了し、調査地を発つ日の早朝、バスターミナルに数名の住民の方々が見送りに来てくださりました。手渡された手紙に書かれた「いつでも帰っておいで」の文字に、「私」としての居場所が地域の中に築かれていることを実感しました。

 持ち帰った膨大なインタビュー・データと向き合い続けた日々。果てしない分析作業の中で、到達点への唯一の指針は、いつもあの地で過ごした自身の体験の中にありました。一住民として、一個人として、地域を歩き、地域で生きた体験のすべてが、データに意味をもたらし、地域の実態が明らかになっていきました。

 一地域の声に向き合い続けた5年間、自身が「やりたいこと」と「できること」との狭間で葛藤し、「自分だからこそ、できること」を築いていった日々でした。実態を明らかにするための一連の研究手法を習得するとともに、研究は決して一連の手法だけではないことも学びました。一連の理論・手法をどうアレンジしていくのか、研究計画の余白をどう活用するのか、自分自身をどうプロデュースしていくのか・・・、地域の声を聴くことはきわめて創造的な営みであることを学び、その中に、研究の楽しみがあり、自分自身の成長がありました。



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