PICUにおけるせん妄、痛み、離脱症状




「小児集中治療におけるせん妄、痛み、離脱症状に関する研究」

 筑波大学附属病院小児集中治療室では、標題の臨床研究を実施しております。
本研究に関する問い合わせ、または研究への参加を希望しない場合は、担当者までご連
絡をお願いいたします。本研究の概要は以下のとおりです。
【研究対象】
研究対象は、2016年8月1日から2021年8月1日までに当院の小児集中治療室に入室した患者様です。

【研究の意義・目的】
 せん妄は手術や病気のなどの影響により、意識が変調する症候群の一つです。成人患者では、せん妄が長期的な予後に影響していることから、せん妄を評価されています。これまで小児患者のせん妄を評価できるツールがなく、小児せん妄に関する調査はほとんど行われていませんでした。近年海外で、小児せん妄ツールが開発され、簡便に評価できるようになりました。しかしながら、小児せん妄ツールは日本語訳され、使用されているものはありません。そのため、当施設は小児せん妄ツールを日本で使用できるように研究を行っております。精神科医のせん妄の診断結果と、小児せん妄ツールの結果を比較して、日本で小児せん妄ツールが使用できるか評価します。

敗血症



使用モデル
リポポリサッカライド(LPS) 投与モデル
Cecal Ligation Puncture (CLP)モデル
予後予測因子および新治療法の検討を行う

•交感神経の抑制と炎症性サイトカインあるいは、内皮機能と炎症性サイトカインの関係に着目して研究と進めている
•LPS投与敗血症モデルラットに対して、ランジオロール(短 時間型β1選択的遮断薬)の投与は末梢循環不全を改善した。
・腎臓への直接の抗炎症作用を示すデータを示した
・敗血症に関連したICU-AWの予防に関する研究を進めている。

International Emergency Medicine
(開発途上国における救急医療システムの構築支援)




近年、開発途上国においては、交通外傷や心疾患・脳卒中等の非感染性疾患の急激な増加が認められる。また同地域においては自然災害や感染症の流行等の公衆衛生危機に曝される事も少なくない。しかしながら、同地域における救急医療システムの整備は先進国と比較し大幅な遅れを取っている。
上記の背景を踏まえて、当科ではASEAN諸国を中心に開発途上国に対する継続的な支援実施による、防ぎ得た死亡の減少、後遺症の軽減を目指した活動を展開している。

・人材育成(研修受け入れ、専門家派遣)
国立国際医療研究センター病院(救命救急センター)、国士舘大学大学院(救急システム研究科)等の国内機関と連携して、新興メコン諸国(ラオス、カンボジア等)からの研修生受け入れ、現地への専門家派遣を通じた、救急医療人材育成に関するプロジェクトを実施している(医療技術等国際展開推進事業など)。
また、ソウル大学校、シンガポール国立大学、国立台湾大学等の海外機関と連携して、ASEAN諸国における救急・災害医療に関する標準化コースの実施、救急医療の質向上を目指した活動を行っている。
*海外からの医療関係者(医学生含む)が当科での研修受入れを希望される場合、まずは当院の国際医療センター(http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/imc/)までご連絡ください。

・研究活動
本学の国際社会医学研究室と連携して、開発途上国における効果的な救急医療システムの構築による交通事故死減少に関する研究を行っている。
アジアにおける外傷死減少を目指した多施設多国間共同研究 Pan-Asian Trauma Outcome Study (Asian Association for EMS学会主導)にも参加している。

近赤外線(NIRS)を用いた心肺停止患者の評価



心肺だけでなく「脳」機能が回復しなければ、 「人を助けた」とはいえません。
心肺は臓器移植できますが、脳は臓器移植 できません。「脳」蘇生ができるかが重要です。
今まで心肺蘇生中に脳機能評価は不可能でしたが、
世界初のリアルタイムに脳血流・機能を評価できる機器を開発、臨床使用や動物実験をしています。
「リアルタイムで行うオーダー メイド蘇生」の実現に向けてチャレンジします

HALを用いた重症患者の早期・身体的リハビリテーションの検討





呼吸管理に関する研究

ARDS(呼吸窮迫症候群)は死亡率の高い非常に予後の悪い疾患 です。しかし、その原因も解明されておらず、確かな治療法もありません。臨床現場では、呼吸管理のみが重要な対症療法と言え ます。一方、喀痰の排出のできない人工呼吸患者において定期的に 行われる気管吸引により、肺胞気の吸引による気道内圧の低下や肺胞虚脱がおこり、人工呼吸中の肺合併症であるVentilator induced lung injury(VILI)を引き起こします。痰の吸引方法、理学 的な手法などを導入して、ARDSモデル動物を用いて、その効果を 比較します。

二酸化炭素中毒



致死レベルの二酸化炭素中毒が体に及ぼす影響は、
まだ、わかっていません。
閉鎖空間 でCO2の濃度を調整して中毒モデル動物を作成し
研究を行っています


ECMOプロジェクト

筑波大学附属病院では重症呼吸不全(呼吸状態の重篤化により、人工呼吸管理などの高度な集中治療を要する状態、ARDSを含む)に対して、様々な条件の人工呼吸を用いた治療に加えて、体外心肺装置を用いた治療を行っています。これらの装置はExtracorporeal membrane oxygenation(ECMO)とよばれ、機械が心臓と肺の役割を果たします。具体的には、ポンプで体内から血液を膜型の人工肺に誘導し、十分な酸素を付与して体内に戻す装置です。
 これまで日本国内では、対応できる施設が限られ、症例数も少ないため、このECMOを用いた治療成績が未だ明らかにされておりませんでした。そこで、日本呼吸療法学会が主導して、『ECMOプロジェクト』を計画しております。これは全国のECMO症例をデータベースに集めて、日本独自の成績と問題点を抽出し、重症呼吸不全に対するECMO治療成績向上をもたらすECMO管理システムを構築することを目的としたプロジェクトです。筑波大学附属病院は本プロジェクトに参加しています。
 治療上ECMOが必要になった患者様の貴重な臨床データについて、日本国内におけるECMO治療の現状の把握と、治療成績の向上のため、本データベースに登録させていただきたいと考えております。



日本外傷データバンク

日本外傷データバンクへの外傷患者登録と登録データを用いた臨床研究

外傷は子供や若年層の死因の第1位、2位を占め、社会的損失の大きい健康問題です。外傷の診療の質を評価し、向上させることは外傷による死亡率を低下させるために重要です。本研究では、外傷診療にかかわるデータを全国の医療施設(主に救命救急センター)から収集し、各医療施設の診療の質評価や、診療行為の効果を評価するための分析を行います。施設ごとのデータを全国データと比較することにより、各施設の診療の現状を評価することが可能になり、診療の質向上に寄与することができます。さらに、集積されたデータを分析することにより、診療行為の効果や診断の精度を評価し、外傷診療システム全体の向上に寄与することが期待できます。
本研究の対象となるのは、全国の救急医療施設を受診され、重症外傷を有する患者様です。当院も研究に参加しております。
個人を特定できる情報を除外した形で患者情報・データを登録します。登録はインターネットを用いた入力により行います。


21トリソミー患児と鎮静剤に関する研究

21トリソミーとは、われわれヒトの遺伝子情報を伝える染色体のうち、21番目の染色体が3つあることによって生じる疾患です。1000人の出生あたり約1.5人生じると報告されており、決して稀な疾患ではありません。また、約40%の21トリソミー患児は先天性心疾患を併存しているとされている経緯から、21トリソミー患児はPICUにおいて治療を必要とすることがしばしばあります。PICUでは、人工呼吸管理や、大きな手術後の集中治療の1つとして、患児に苦痛を与えないために、鎮静剤を用いて、適度な眠り深度に調整することがあります。近年、21トリソミー患児において、この鎮静剤の効力が異なることが報告されております。通常量の鎮静剤ではなかなか鎮静が効かなかったり、一方で深くなりすぎて目覚めなかったりと、様々です。しかし、現在のところ詳細なことはわかっておりません。従って、当院PICUにこれまで入室した患者様のデータを使用させていただき、入院中に記録された診療録から様々なデータを評価をさせていただく研究を考慮しています。


集中治療室における有害事象に関する研究

「集中治療室における有害事象把握ツールの開発」
「ICUにおける有害事象発生率とその要因に関する研究」

筑波大学附属病院集中治療室では、標題の2つの臨床研究を実施しております。
本研究に関する問い合わせ、または研究への参加を希望しない場合は、公開文書に記載されている担当者までご連絡をお願いいたします。本研究の概要は以下のとおりです。
【研究の意義・目的】
有害事象とは医療に起因した患者さんへの予期されない障害(治療の副作用や合併症など)のことで、集中治療室(ICU)での有害事象の発生率は比較的高いとされていますが、日本のICUでの有害事象の実態は明らかになっていません。その実態を明らかにし、予防対策を講じて医療の質を向上するために、海外で使用されているICUの有害事象を把握するためのツール「ICU Trigger Tool」を翻訳し、その性能を検証します。また、この有害事象を起こしやすい状態や状況について、明らかにすることで今後有害事象を予防できないかと考えこれらの研究をおこないます。

「集中治療室における有害事象把握ツールの開発」


「ICUにおける有害事象発生率とその要因に関する研究」

「アジアの集中治療における敗血症の疫学研究
(The MOSAICS II study)」

敗血症の研究の多くは、欧米の先進国を対象としたもので、世界のその他の多くの地域における敗血症の疫学についてはほとんど明らかになっていません。 本研究の主目的は、アジアの集中治療室(ICU)における敗血症の有病率を検討し、その要因と予後を調査することです。副次的な目的は、1)Surviving Sepsis Campaign guidelinesで推奨されている治療が施行されるまでの時間を調査すること、2)アジアにおける敗血症の疫学と治療方法を、地域、および高・中・低所得国で比較すること、3)特殊感染に伴う敗血症における疫学とその管理を調査することです。

「小児集中治療における長期人工呼吸管理患者の国際横断研究」

科学の進歩や人口増加、死亡率の低下、疾病の複雑化のために、多くの先進国の小児集中治療室(pediatric intensive care unit; PICU)で、長期間にわたり人工呼吸器のサポートを受ける患者数が増加しています。過去の研究でも、少数の小児が長期間にわたり集中治療を要し、多くの人的・物的資源が必要となっていることが示されています。
私たちは14日間以上の人工呼吸器管理を要する場合を、長期間の人工呼吸管理(prolonged mechanical ventilation; PMV)と定義した上で、PICUにおいてPMVを受ける小児の国際点観察研究を行います。北米、南米、ヨーロッパ、アジア各国を含む数カ所の地域の複数の施設において、PMVを要する患者に対する管理方針、入退室方針、治療法、PMV患者のケアに携わる専門職種、ケアのタイプなどを調査します。本研究により、ガイドラインを作成する必要性が認識され、PICUにおける患者ケアの質の向上につながると考えています。

「重症患者における血圧の誤差に及ぼす要因の探索」

【研究の意義・目的】
重症な患者様が入られる集中治療室では、血圧、脈拍、体内の酸素の値などをモニタリングし、異常がないか、安全な療養環境が保たれているか確認しています。集中治療室におられる多くの患者様は、動脈にカテーテルが挿入され、連続して血圧がモニタリングされるようになっています。しかし、この動脈圧はマンシェットで測定される血圧と異なる値を表すことがしばしば存在します。私たちは、そのような血圧の誤差に与える要因を調べることを目的とした研究に取り組んでいます。
この要因が明らかになることで、より安全で質の高い血圧管理を行うための手段を考えることができると考えています。

「人工呼吸患者に対する研究」

「人工呼吸患者に対する看護師の気管内吸引の実態調査」

【研究の意義・目的】
当院ICUにおいて、人工呼吸管理を必要とする患者様に対して、どのような気管内吸引の手技が実施されているか看護師の臨床実践について実態調査をさせていただきます。また、気管内吸引前後での患者様の状態について情報収集させていただき、気管内吸引の根拠作成の一助とさせていただきます。


「人工呼吸患者に対してNRS表の導入が患者アウトカムに与える影響」

【研究の意義・目的】
当院ICUでは、人工呼吸による治療を行っている患者様に対して、ご自分の痛みを表現してもらうために、0から10までの数字が書かれた表を提示して痛みの程度を示すことができるようにしました。そこで、人工呼吸管理を受けている患者様の痛み評価が適切に行われているか検討させていただきます。

「日本救急医学会関東地方会における院外心肺停止患者に対する連結不可能匿名化を用いた多施設前向き観察研究」

【研究の意義・目的】
院外心停止患者の転帰を改善するための多施設研究を行います。これにより
心停止後の管理などに関する様々なエビデンスを形成しガイドラインの改訂にも寄与してきます。

重症患者における腹部症状が患者アウトカムに与える影響

【研究の意義・目的】
集中治療室に入られる重症な患者さまは、下痢や便秘、嘔吐、腸蠕動が低下するなどの症状がよく起こると言われています。これらは患者さまの不快感につながり、患者さまの死亡率の増加や入院日数の延長などに関連しているという報告もあります。
そのため私たちは、当院の集中治療室において重症患者のみなさまにどのような腹部症状がどれくらい発生しているか、そして患者さまの入院生活に悪影響を及ぼしていないかを調査したいと考えています。そしてこの研究を、今後これらの腹部症状を予防するための研究の資料の一助にしたいと考えております。

患者情報システムを用いた集中治療部の機能評価に関する研究

【研究の意義・目的】
当院集中治療室は、一般社団法人日本集中治療医学会が運営する診療データベース事業(日本 ICU 患者データベース、Japanese Intensive care Patient Database [JIPAD])に参加しています。 JIPAD事業は、集中治療室に入室した患者さんの重症度等の医療情報を収集し、各施設間での比較および研究を行うことによって、医療の質の向上および集中治療医学の発展をめざすことを目的としています。

「COVID-19感染患者治療の疫学的調査」

【研究の意義・目的】
COVID-19にはまだ確立された治療方法がなく、現在行われている治療は、これまでの他ウイルス疾患や肺炎などの治療の経験に基づくところが大きく、本感染の疫学的検討や治療方法に関するデータの集積・解析が、今後のCOVID-19感染症治療の確立には急務であります。そこで今回の研究の目的は、日本におけるCOVID-19感染症における臨床データ・治療内容を解析し,病態解明・治療法開発の一助とすること、また広島大学主導で全国の多施設でのデータを集め、日本独自の疫学的評価を行うことを目的としています。

「重篤小児患者の施設間搬送に関する多施設共同レジストリ」

【研究の意義・目的】
重篤小児患者が小児集中治療室に搬送される際に、搬送担当者が小児搬送熟練者(小児集中治療室の医師もしくは小児搬送チームを有する施設の搬送担当医師)とそれ以外の医師の場合での有害事象の発生の差を調査するために本研究を行います。

集中治療室のLow-intensity modelからHigh-intensity modelへの移行が重症患者における有害事象の発生率に与える影響」

当院集中治療室では2019年4月よりClosed ICUという集中治療室に入室した患者さまに対して集中治療医が主治医となり治療をおこなっていく体制をとっております。その理由としては、集中治療の専門医が治療方針を決め、いつでも駆けつけることが可能な体制をとることで患者さまの死亡率が改善すると報告されているためです。
また集中治療室の患者さまにおいては手術や治療の合併症・副作用といった有害事象が多く発生すると言われていますが、Closed ICUという体制において有害事象の発生が抑えられるという研究はまだおこなわれていません。そのため、私たちは過去4年間のカルテの記録をもとに有害事象の発生率がどの程度変化しているのかを調査したいと考えております。