筑波大学医学医療系・分子遺伝疫学研究室は「ヒトゲノム多様性と疾患」をキーワードとして研究に取り組んでいます。

自己免疫疾患

膠原病の発症や臨床経過に関連する遺伝子の研究

膠原病や関節リウマチでは、病態解析やゲノムワイド解析の知見に基づき、疾患感受性遺伝子の候補となる多数の遺伝子領域が存在します。それらのそれぞれにつき、実際にその領域のどの遺伝子多型が重要であるのかを特定することが、分子機構の解明、分子創薬やよりよいバイオマーカーの開発上、重要です。

当研究室では、Ⅰ型インターフェロン・パスウェイ関連遺伝子、NF-κB制御系遺伝子、 B細胞機能関連遺伝子などを主な対象として、候補遺伝子解析を進めてきました。

Ⅰ型インターフェロン・パスウェイ関連遺伝子

全身性エリテマトーデス(SLE)を始めとする膠原病では、臨床的観察や網羅的遺伝子発現解析により、病態におけるⅠ型インターフェロン(type I IFN)の重要性が示されています(Kyogoku, Tsuchiya. Genes Immun 2007;8:445-55 外部リンク )。この情報に基づき、type I IFNパスウェイに関連する遺伝子の多型と疾患感受性との関連が、国内外において検討されています。私たちは、日本人集団において、以下の成果を報告してきました。

1)日本人集団のSLE、全身性強皮症におけるIRF5の関連研究

IRF5 (interferon regulatory factor 5)はtoll-like receptor (TLR)シグナルやウイルス感染により活性化される転写因子で、type I IFNや炎症性サイトカインの誘導に関与します。IRF5には、直接機能的意義を有する複数の多型部位が存在し、ヨーロッパ系集団において、最初にIRF5多型とSLEの関連が報告されました。

私たちは、日本人集団におけるSLEとIRF5多型との関連を検討したところ、連鎖不平衡の違いにより、ヨーロッパ系集団におけるSLEリスクハプロタイプは日本人集団には存在しないこと、逆に、ヨーロッパ系集団には存在しないSNPにおいて、有意な関連が検出されることを報告しました。また、IRF5およびIFN関連遺伝子の発現とIRF5 遺伝子型との関連が認められました。これらの知見より、IRF5が集団を超えたSLE感受性遺伝子であること、疾患関連多型には集団差が存在することが明らかになりました。
(Kawasaki et al., Arthritis Rheum 2008;58:826-34外部リンク )

私たちは、さらに、日本人集団における全身性強皮症とIRF5多型との関連を見いだしました。
(Ito et al., Arthritis Rheum 2009;60:1845-50 外部リンク )

2)TLR7(toll-like receptor 7)とSLEとの関連

TLR7は、一本鎖RNAを認識する受容体で、type I IFNを誘導します。X染色体に位置し、SLEモデルマウスであるBXSBでは、TLR7を含む領域のY染色体への転座が原因であると示唆されています。

私たちは、TLR7を候補遺伝子として、SLEとの関連を日本人集団において検討していましたが、共同研究者であるBetty Tsao教授(UCLA)の呼びかけにより、東アジア集団におけるTLR7とSLEとの関連を検討する国際共同研究に参画し、3’非翻訳領域(UTR)に位置するSNPの関連を報告しました。このSNPは、TLR7 mRNAの上昇に関連します。
(Shen et al., Proc Natl Acad Sci USA 2010;107:15838-43 外部リンク )

一方、日本人集団における私たちの研究結果では、上述のSNPに加え、イントロンSNPにおいてもSLEとの有意な関連が検出され、これは3’UTR SNPと独立にSLEに寄与することが見いだされました。
(Kawasaki et al., Arthritis Res Ther 2011;13:R41 外部リンク )

3)STAT4とSLE、全身性強皮症との関連

STAT4は、IL-12やtype I IFN刺激により活性化され、T細胞のTh1への分化、IFNγ産生誘導に関与する転写因子です。ヨーロッパ系集団において、SLE、RAとの関連が報告されました。私たちは、STAT4および隣接する
STAT1領域の高密度SNPタイピングを行い、ヨーロッパ系集団同様、STAT4イントロンに位置するSNPとSLEとの関連を検出するとともに、日本人集団におけるリスクアリル頻度は、ヨーロッパ系集団と比較して顕著に高いことを見いだしました。
(Kawasaki et al., Arthritis Res Ther 2008;10:R113 外部リンク )

また、STAT4が全身性強皮症とも関連することを見いだしました。
(Tsuchiya et al., Ann Rheum Dis 2009;68:1375-6 外部リンク )

4)SPI1(PU.1)の機能的多型とSLEとの関連

SPI1(PU.1)はEtsファミリーに属する転写因子であり、ミエロイド系細胞、リンパ球系細胞の分化に関与します。また、SPI1は、IRF2、IRF4、IRF8と相互作用することが知られています。私たちは、SPI1のイントロンSNPとSLEとの関連を見いだしました。このSNPと強い連鎖不平衡にある3’UTRのSNPのリスクアリルは、データベース解析により、SPI1 mRNAの発現増強に有意に関連することが見いだされ、リポーターアッセイによっても確認されました。

このSNP含む配列をデータベース解析したところ、miRNAの結合部位がSNPによって変化し、リスクアリルではmiRNA結合モチーフが失われることが明らかになりました。実験的にも、SPI1 3’UTR配列を含むリポーターベクターとmiRNAとの同時導入にしたところ、miRNAが、非リスクアリルを含むリポーターベクターの発現を抑制する一方、リスクアリルの発現は抑制しないことが確認されました。
(Hikami et al., Arthritis Rheum 2011;63:755-63 外部リンク )

NF-κB活性化経路関連遺伝子群
1)TNFAIP3, TNIP1とSLEとの関連

TNFAIP3がコードするユビキチン修飾分子A20は、NF-κB活性化に抑制的に働きます。また、TNIP1は、A20に結合するアダプター分子であるABIN-1をコードします。私たちは、これらの遺伝子と日本人SLEとの関連を検討し、いずれも関連が見られること、TNIP1のリスク遺伝子型頻度は、日本人集団において、ヨーロッパ系集団より顕著に高いことを見いだしました。
(Kawasaki et al., J Biomed Biotechnol 2010; doi:10.1155/2010/207578 外部リンク
Kawasaki et al., Arthritis Res Ther 2010;12:R174外部リンク )

2)UBE2L3と全身性強皮症との関連

UBE2L3はユビキチン結合酵素をコードする遺伝子で、p53、c-FosやNF-κB p50のprecursorである p105のユビキチン化における関与が報告されています。UBE2L3多型とSLEの関連はすでに報告されていましたが、私たちは、UBE2L3多型と全身性強皮症との関連を、世界に先駆けて報告しました。
(Hasebe et al., Ann Rheum Dis 2012; 71:1259-60外部リンク )

B細胞機能遺伝子群

自己抗体産生が特徴の一つである膠原病では、B細胞機能遺伝子群が重要な候補遺伝子となります。私たちは、
B細胞機能遺伝子群を候補遺伝子として、膠原病との関連を解析してきました。

1)抑制型受容体Fcγ受容体IIb (FCGR2B)との関連

FCGR2Bは免疫系多重遺伝子ファミリーの一員ですので、多重遺伝子ファミリーの項で解説します。

2)BLKとSLE、RA、全身性強皮症の関連

2008年にヨーロッパ系集団におけるゲノムワイド関連研究により、染色体8q23.1に位置するFAM167A-BLK領域のSNPとSLEとの関連が報告されました(Hom et al., N Engl J Med 2008, International Consortium for Systemic Lupus Erythematosus Genetics, Nat Genet 2008)。BLK(B lymphoid tyrosine kinase)は、Lyn、Fynと共にSrc familyに属する、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達に関わるB細胞特異的なチロシンキナーゼです。

私たちは、日本人集団における関連解析を行い、強い関連を確認するとともに、リスクアリルは、ヨーロッパ系集団と比較して、日本人におけるアリル頻度が顕著に高いことを見出しました。
(Ito et al., Arthritis Rheum 2009;60:553-8外部リンク )

私たちはさらに、このSNPが、関節リウマチ(Ito et al., Ann Rheum Dis 2010;69:936-7 外部リンク )
全身性強皮症(Ito et al., Arthritis Rheum 2010;62:890-5 外部リンク )とも関連することを見いだし、BLK領域が複数の膠原病に共通する疾患感受性領域であることを明らかにしました。

マウスでは、BLK単独のノックアウトでは、BCRシグナル伝達やB細胞分化に顕著な障害はないと報告されておりますので(Saijo et al., Nat Immunol 2003)、ヒト疾患研究におけるゲノム解析の有用性を示す例と考えられます。

3)TNFSF13 (APRIL)多型とSLEとの関連

TNFSF13(APRIL)、TNFSF13B(BAFF, BLyS)は、B細胞上の受容体(BAFF-R、TACI、BCMA)に結合し、B細胞の分化・生存を誘導する分子です。私たちは、これらのリガンド・受容体群を候補遺伝子として関連研究を施行し、TNFSF13の2個所のアミノ酸置換によって規定されるハプロタイプとSLEとの関連を報告し(Kawasaki et al., Rheumatology 2007;46:776-82 外部リンク )、機能解析を行いました。(Mod Rheumatol 2012;22:541-9 外部リンク )

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Key Words

ヒトゲノム、遺伝子多型、
人類遺伝、自己免疫疾患、
膠原病、
全身性エリテマトーデス(SLE)、
関節リウマチ、
ANCA関連血管炎、
全身性強皮症、病因解明、
個別化医療

医学医療系 登録研究グループ (リサーチグループ)

ゲノム医科学 リサーチユニッ卜

難治性免疫疾患・アレルギー リサーチユニッ卜

当研究室メンバーは、筑波大学において認定された「ゲノム医科学リサーチユニッ卜
難治性免疫疾患・アレルギーリサーチユニッ卜」の構成員です。

〒305-8575 茨城県つくば市天王台1-1-1 電話029-853-2111(代表)

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