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僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClip)

【担当医師】
山本 昌良(水曜日午前)

僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Regurgitation: MR)とは

僧帽弁閉鎖不全症(以下、MR)は、2枚の弁から成る僧帽弁の間にすき間が生じることで、血液が左心室からの左心房へ逆流をきたす弁膜症です。MRには、弁そのものに異常がある一次性(器質性)MRと、心筋梗塞や拡張型心筋症など心臓の病気があり、心臓が拡大することで弁の閉鎖が減弱して生じる二次性(機能性)MRの2種類に分けられます。MRは初期には症状が現れないことが多く、進行すると息切れや浮腫といった心不全症状を認めるようになります。放置するとMRの重症度や症状は徐々に悪化していきます。

僧帽弁閉鎖不全症は最も頻度の高い弁膜症であり、これまでは外科的開心術が標準的治療として行われてきました。しかし、高齢者や多くの併存疾患を持つ患者さん、心機能の低下している患者さんに対しては、手術リスクが高いという理由で手術が積極的には行われてきませんでした。その結果、息切れにより日常生活に制限が生じたり、心不全による入退院を繰り返す患者さんも多く存在します。

MitraClip®とは

MitraClip®はアボット社が開発したカテーテルによる僧帽弁閉鎖不全症に対する治療法です。欧米では臨床応用の開始から15年以上経過しており、海外ではすでに8万人以上の患者さんがこの治療を受けておられます。MitraClip®の利点としては、従来の外科的手術のように胸を切開することや心臓を停止させる必要がないことから、患者さんの身体への負担が少ないのが特徴です。そのため、これまでは開胸手術ができないとされていたハイリスクの患者さん、ご高齢の方でも、治療可能な場合があります。通常は全身麻酔下で大腿静脈からのアプローチにより行われ、術後経過が順調であれば、術後約1週間で退院が可能です。

僧帽弁閉鎖不全症の評価

僧帽弁閉鎖不全症は重症度の評価が難しい場合も多く、中等度と判定されていても、より詳細な検討を行った結果、重症であることが判明する場合も少なくありません。また、安静時のエコーでは中等度であっても、エルゴメーターやハンドグリップを用いた運動負荷心エコーを行うことで重度まで悪化する場合は、運動機能の低下に影響を及ぼしていることもあります。当院では積極的に運動負荷エコー検査を行うことで、本来は治療適応がある患者さんを見逃すことの無いように努めております。

機能性僧帽弁閉鎖不全症に対するMitraClip®

僧帽弁逸脱などによる一次性(器質性)MRに関しては、外科手術による予後の改善が証明されてきました。しかし、心機能低下により生じる二次性(機能性)MRに対しては外科手術による予後改善効果は証明されてきませんでした。それは外科手術が体や心臓に対する負担が大きいことが主な理由と考えられてきました。しかし、2018年に発表された機能性MRの患者さんを対象にMitraClipの有効性を検証したCOAPT試験(N Engl J Med. 2018; 379: 2307-2318)では、MitraClipを施行した群は薬物治療のみの群と比較し、2年間のフォローアップ期間において、心不全の入院が約47%、総死亡が約38%減少していることが報告されました。これはMitraClipが機能性MRに対する介入において、初めて予後改善のエビデンスを示したと考えられます。機能性MRは内科的治療により改善することがあり、まずは心不全治療の専門医により十分な内科的治療を行いますが、治療により改善しないMRに対してMitraClipは予後を改善しうる重要な治療法と考えられます。

心筋梗塞後の機能性MRに対するMitraClip(自験例)

1つのクリップを留置し、MRは重症からごく軽度にまで改善を認めた

MitraClip®の適応

MitraClipは外科手術の危険性が高い、もしくは不可能と判断された場合に適応になります。 具体的には、高齢である、心臓や腎臓の機能が低い、免疫抑制薬を内服している、開心術の既往がある、などが挙げられます。ただし、心機能の低下が著しい、強心薬に依存している、僧帽弁の形態がMitraClipに適さない、などの理由からMitraClipによる治療が困難な場合があります。最終的には心臓超音波検査にて僧帽弁の形態を評価し、手術リスクを含めた全身状態の評価を行い、循環器内科、循環器外科、麻酔科、臨床検査技師・臨床工学技師などの多職種からなるハートチームカンファレンスにて最適な治療法(MitraClip・外科手術・内科的治療)を検討します。

患者さんの
紹介に
ついて

中等度以上の僧帽弁閉鎖不全症の患者様を是非ご紹介ください。詳細な評価を行った後に、多職種によるハートチームカンファレンスにて最適な治療法(MitraClip・外科手術・内科的治療)について検討をさせていただきます。
予約センター 
TEL:
029-853-3570
外来 毎週水曜日・午前 山本昌良

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