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臨床
心筋症・ファブリー病・アミロイドーシス

心筋症・ファブリー病・
アミロイドーシスとは

【担当医師】
家田真樹(月曜午後専門外来)

心筋症とは、心臓が肥大や拡大を起こしたり、収縮力が低下した状態をいいます。これらの心臓の形態的・機能的な変化は、特発性の肥大型心筋症や拡張型心筋症のように原因が不明の場合もありますが、高血圧、心筋梗塞、甲状腺機能異常などが原因の場合もあります。

また近年、指定難病であるファブリー病やアミロイドーシスに起因する心筋症が、これまでの想定よりも多いことが報告されています。ファブリー病やアミロイドーシスについては、新しい根治的治療薬が開発されていますが、一般診療での診断や治療はいまだ難しく、全身臓器に障害をきたすため、複数の科による連携が不可欠です。

筑波大学病院では、各科専門医と多職種からなるチームが緊密に連携し、こうした難病診療を行う体制が整っています。ここでは主にファブリー病、アミロイドーシスについてご説明します。

ファブリー病

ファブリー病とは、全身の細胞のライソゾームに存在するα-ガラクトシダーゼAという酵素が生まれつき少ないことにより、様々な症状が引き起こされる病気です。細胞内でα-ガラクトシダーゼAが低下すると、不要な糖脂質「GL-3(グロボトリアオシルセラミド)」が蓄積されるため、全身臓器で障害が起こり、多彩な症状を呈します。
ファブリー病は先天代謝異常症のひとつで、遺伝子の異常が原因であるため、病気が子どもに伝わる可能性もあります(X連鎖性遺伝)。

主な症状

ファブリー病では、心臓(心肥大、不整脈、弁膜症)に加えて、末梢神経(四肢末端痛)、皮膚(被角血管腫)、自律神経(低汗症・無汗症)、眼(角膜混濁)、消化器(腹痛、下痢、便秘)、耳(難聴)、脳(精神症状、脳血管障害)、腎臓(蛋白尿、腎不全)など多臓器にわたる障害の症状を認めます。
またα-ガラクトシダーゼA活性が残存し、多臓器の障害は現れず、心症状が主となる心ファブリー病もあります。心臓の障害は一般的に中高年以降に出現することが多く、大人になってからファブリー病と診断されることもあります。

ファブリー病は年齢により様々な臓器障害が出現

診断・検査

❶血液、尿検査

血液中の血漿(けっしょう)、白血球、あるいは尿中のα-ガラクトシダーゼA活性や糖脂質蓄積の測定を行います。
酵素活性の欠損・低下、或いはLyso-Gb3など糖脂質蓄積を確認します。

❷心臓検査

心電図や心エコー検査では、左室肥大などを認めます。左室肥大は進行性ですが、病期が進行すると肥大の退縮や左室後壁基部に限局した菲薄化が出現します。
また徐脈や心室頻拍など多彩な不整脈を認めます。弁膜症や冠動脈狭窄による狭心症を認めることもあります。
病期が進むにつれて肥大型心筋症から拡張相肥大型心筋症様の病態へと進行し、心不全や致死性不整脈など重篤な障害を発症することが知られています。

ファブリー病による左室肥大

❸病理診断

皮膚や腎臓、心臓などの組織のごく一部を採取して、異常があるかどうかを顕微鏡で調べます。
心臓ではカテーテル検査を行って検査します。心臓組織に特徴的な心筋の空胞変性や線維化をきたしているかを調べます。

❹遺伝子診断

採血による血液細胞の遺伝子検査をします。女性のファブリー病では、酵素活性のみでは診断できない場合があり、このようなときに遺伝子診断が行われます。また、経口薬であるシャペロン療法を行う場合も遺伝子検査が必須となります。当院では遺伝診療科で遺伝カウンセリングも行っています。

治療

ファブリー病の治療には、α-ガラクトシダーゼA酵素欠損・低下に対する根本的治療である酵素補充療法と、シャペロン療法があります。さらに心機能障害や腎機能障害などに対する一般的治療を行います。酵素補充療法、シャペロン療法ともに、早期からの治療が有効とされています。

❶酵素補充療法

欠損・低下しているα-ガラクトシダーゼAを点滴で補充し、体内で蓄積している糖脂質を分解する治療法です。症状を改善し、病気の進行を抑えることができます。薬は2週間ごとに点滴投与し、1回の治療には約1~3時間ほどかかります。副作用としてアレルギー反応や顔面紅潮・悪心などが出現することがあります。

❷シャペロン療法

経口薬による新しいファブリー病治療です。低分子化合物が変異α-ガラクトシダーゼAに結合して酵素活性を上昇させ、糖脂質を分解します。経口薬である点は長所ですが、遺伝子変異のタイプにより有効性が分かれ、治療開始には遺伝子検査が必要です。

アミロイドーシス

アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれる線維状の異常蛋白質が全身の様々な臓器に沈着し、機能障害を起こす病気です。特に心臓にアミロイドが沈着した状態を心アミロイドーシスと呼びます。
原因となる異常蛋白としては、免疫グロブリン軽鎖が沈着するALアミロイドーシスと、トランスサイレチンが沈着するTTRアミロイドーシスが全体の約9割を占め、炎症に関連するAAアミロイドーシスも、稀に見られます。
数年前までは予後不良で不治の病と考えられていましたが、近年になり新しい根治的治療が開発されています。

主な症状

アミロイドーシスでは心臓だけでなく、腎臓、消化管、末梢神経等の重要な全身臓器にアミロイド蛋白が沈着します。その結果、これらの臓器・組織の機能障害が起こり、多彩な全身症状を呈します。主な症状としては不整脈、心不全、蛋白尿、腎不全、便秘と下痢の繰り返し、起立性低血圧や手足のしびれと麻痺などがあります。
心アミロイドーシスの主な原因となるAL型とTTR型の2タイプでは、一般的にAL型アミロイドーシスの方が病気の進行が速いですが、いずれの病型も早期診断・早期治療が重要です。

診断・検査

❶血液・尿検査

AL型アミロイドーシスでは、しばしば血清中の単クローン性γ-グロブリンや、尿中のBence Jonesタンパクが見られることがあります。また、血中の免疫グロブリン遊離軽鎖(κ、λ)が上昇します。
骨髄検査により形質細胞の状態を確認します。

❷心臓検査

心電図、心エコーやMRI検査では左室肥大や拡張障害を認めます。左室肥大は進行性で、病期が進行すると収縮障害や線維化を認めます。
心エコーでは心筋の輝度上昇や、心臓の先端の動きが良いまま保たれるという特徴があります。さらに徐脈や心房細動、心室頻拍など多彩な不整脈を認めます。
TTR型アミロイドーシスでは99mTc ピロリン酸シンチで心臓が陽性に描出され、診断に有用です。

心アミロイドーシスによる線維化

❸病理診断

心臓や皮膚、消化管などの組織のごく一部を採取して、アミロイド蛋白が沈着しているかどうかを顕微鏡で調べます。心筋生検にてアミロイドが確認されれば、診断が確定されます。通常のヘマトキシリン・エオジン染色に加えて、コンゴレッド染色や最近ではダイレクトファーストスカーレット(DFS)染色で、はっきりと分かるようになりました。さらに特異的な抗体を用いた免疫染色により、AL型、TTR型などアミロイドーシスの病型を確定します。

❹遺伝子診断

TTRアミロイドーシスは、遺伝性と非遺伝性に大別されます。いずれもトランスサイレチンという蛋白質の遺伝子を検査します。
難病申請や根治的治療などで遺伝子検査が必要となります。

治療

従来は対症療法が中心でしたが、近年、アミロイドーシスの種類に基づいた根治的治療法が発展してきました。

TTR心アミロイドーシスに対するタファミジス(ビンダケル)の投与は、2019年より限られた専門施設で治療導入が可能になり、当院は県内唯一の認定施設となっています。タファミジスは内服薬であり、比較的高齢の患者さん(平均75歳)を対象にした大規模臨床試験で死亡率や心不全の改善が示されています。薬の作用機序としてはタファミジスがトランスサイレチンに結合して、蛋白安定化によりアミロイド形成を抑制して病気の進行を抑えることが知られています。また遺伝性TTRアミロイドーシスではタファミジスに加えて、パチシランという核酸医薬(RNAi)により直接的にトランスサイレチン合成を抑制する薬(3週に1回点滴治療)も使用可能です。

一方、ALアミロイドーシスでは免疫グロブリン軽鎖を産生する異常形質細胞をターゲットとした治療となり、自己末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法や新規化学療法薬を使用します。これらアミロイドーシスの診断と治療は循環器内科と各科専門医が連携して行います。
アミロイドーシスは進行性の病気で早期の治療開始が重要ですので、なるべく早めにご相談ください。

患者さんの
紹介に
ついて

原因不明の心筋症、ファブリー病、アミロイドーシスの循環器専門外来を月曜午後に家田真樹が担当しています。同じ月曜日に他科の専門外来もかかれるように診療ネットワークを構築していますので、患者さんにとって負担が少なく各科専門医による診察が可能です。
 予約センター 
TEL:029-853-3570
 外来日時 
毎週月曜日・午後
 担当医師 
家田真樹

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