研究グループ 研究グループ

疫学(我妻 ゆき子)

臨床疫学とは、疫学と臨床科学の基本理論をもとに発達してきたモダン医学の一領域である。臨床疫学の手法は、基礎医学の理論体系に基づいた経験と、患者の治療やケアをする際に提起された複雑なオープンエンド的課題との間にある概念的ギャップを理解するのに有用である。臨床試験と臨床疫学に関する理論と方法の開発、およびその応用に関する研究を行う。各種疾患領域における臨床研究を通じて、疾病制御に関するエビデンスを提示し、患者の治療やケアを改善することを目指す。

生物統計学(五所 正彦)

生物統計学とは、医学・生物学領域のための応用統計学の一分野で、これらの領域で生じる科学的問題に回答を与えるための学問です。研究仮説を検証するためのデザインや評価変数,測定時点などを適切に設定できているか、サンプルサイズは必要十分となっているか、妥当な統計手法が選択されているかなど、医学系研究の計画から報告までの過程で生じる統計学的問題を解決するための研究を行っています。大学院生の研究課題は「医学系研究で生じる統計学的問題に対する新しい統計手法の開発,統計手法の使い分けや性能評価」です。生物統計学を通じて、医生物学・健康科学の発展に貢献することを目指しています。

産業精神医学・宇宙医学(笹原 信一朗)

私たちの研究室は、心の健康の謎を解くことを目指して、実現可能で身近な研究テーマから日々一つひとつ取り組んでいます。そのため、研究テーマは時代のニーズと各メンバーの興味とで柔軟に変化して来ています。しかし、そこには一貫した研究理念があります。研究は好奇心がないと始まりませんが、その好奇心を世のため人のために活かしていくという目指すべき理想があることで、その研究の実現可能性は高まって行きます。また、研究は一人で出来ることは限られますので、周囲との良き協力関係が研究の幅を広げます。これらのことを意識しながら、それぞれの個性を活かせるように、お互いに切磋琢磨しながら研究成果を社会に還元し幅広く活動しています。

保健医療政策学・医療経済学(近藤 正英)

保健医療政策学研究グループは、保健医療行政及び諸制度が抱える諸問題や保健医療サービスの質に関して、医療管理学、医療経済学、環境保健学、環境疫学、国際保健学的アプローチにより評価分析を行うとともに、これらの成果を元により効果的な政策の構築を目指した活動を行っています。具体的な事例としては、感染症対策や癌医療に関する医療経済学研究を行ってきています。保健医療サービスの費用効果分析や市場分析の手法を用いています。さらに、国際保健に関する研究や、地球温暖化の健康影響評価に基づいた適応策に関する研究も行ってきています。

ヘルスサービスリサーチ(田宮 菜奈子)

へルスサービスリサーチとは、医療(保健・看護・福祉を含む)のサービスの質を、Structure(Policy, Staffing, Facility, Budget, Insurance, Health systemなど)、Process(Utilization, Accessibility and Referral under Health systemなど)、Outcome(QOL, Cost, Satisfaction, ADL, Well-being, Survivalなど)を基本とした視点から、個々の医療技術だけでなく、それがサービスとしてどう配分されているか、どのような効果をもたらしているのかを、包括的・科学的に実証分析する学際研究です。われわれの研究グループは、医療分野だけでなく、政策学、法学、経済学、社会学、人類学等の学際的視点からの成果を有効に取り入れ、すべての人がよりよい医療サービスを受けられるための仕組みを研究し、その成果を国内外に発信することで、サービスの質向上を図り、『生活と調和した医療実現』の一助となることを目指しています。

ヘルスサービスリサーチ(渡邊 多永子)

ヘルスサービスリサーチ(HSR)は、医療・介護・福祉サービスの質、アクセス、費用対効果などを科学的に評価し、政策や実践の改善に役立てる学際的な研究領域です。私自身は、HSRの視点から、医療・介護の質の評価、家族介護者支援、障害者支援、孤独死や虐待といった、社会的に脆弱な人々の健康と暮らしに関する研究を行っています。公的統計やレセプトデータなどを活用し、現場や行政のニーズに応える研究を目指しています。

デジタルヘルス(岩上 将夫)

デジタルヘルス(デジタルメディシン)は、医学の中でも比較的新しい分野であり、電子カルテやレセプト情報、モバイルアプリや生体センサー情報、画像や音声情報、ゲノムやオミックス情報、などデジタル化された様々な医療情報に、従来の疫学・統計手法だけでなく、機械学習などのAI解析技術を適用し、人体から社会に渡る様々な医学・医療の課題を解決することを目標としています。疫学および生物統計の基本をしっかり習得した上で、新しいタイプの医療ビッグデータを解析し、患者、医療者、社会の役に立つメッセージを見つけ発信する、あるいは新しいツールやモダリティを開発・実装することにチャレンジする意欲のある方を歓迎します。

高齢者ケアリング学分野(橋爪 祐美)

当研究グループは超高齢社会を迎え、高齢者とそのご家族、ケアを要する高齢化するすべての人に有用な研究や教育活動に努めています。私自身は老親を介護する働く女性のワーク・ライフ・バランスとメンタルヘルス、介護する熟年勤労者夫婦の支援、結婚移住外国人女性と日本人の夫の家族介護と協力体制、家族ケアとジェンダー、富山型デイサービス、モンゴルに関するテーマに取り組んでいます。グループの研究では質的研究手法(グラウンデット・セオリー・アプローチ)を用いたミックス法の研究などを進めています。医療福祉分野の研究に関心のある実務経験を持つ方を歓迎します。

国際社会医学(市川 政雄)

「人びとの健康格差は、国内はもとより先進国と途上国の間にもみられ、それは政治的、社会的、経済的に容認できないものであり、すべての国に共通する関心事である」(アルマ・アタ宣言、1978年)。本研究グループでは、そのような問題意識をもち、単に知的欲求を満たすのではなく、社会を変えていくための研究を目指し、社会的弱者の健康問題や、世界的に取り組むべき優先順位の高い健康問題に取り組んでいます。現在、国内では高齢者のモビリティと健康について、国外ではアジア諸国を中心に外傷予防・健康増進に向けた問題解決・行動指向型研究を立案・実施しています。

産業保健(堀 愛)

世界の人口の6割が働いています。仕事が人々の安全と健康を脅かすことがあってはなりません。しかし職業病や労働災害、作業関連疾患は常に発生しています。現在も、物理的因子、感染症、技術革新、社会経済構造の変化など、さまざまな要因が働く人々の健康を脅かしています。仕事による健康障害を予防するためには、本質的な原因を探求して元から断つ、地道な努力が不可欠です。産業保健学は、医学・公衆衛生学・疫学を基礎とする学際的な実践科学であり、働く人々の健康を守るための学問です。

国際発達ケア:エンパワメント科学(安梅 勅江)

当研究室では、エンパワメントを科学する研究を行っています。エンパワメントとは、「活き活きとした生きる力(活生力)」「きずな育む力(絆育力)」「共に創る力(共創力)」を紡ぐことです。誰もが持っている限りない可能性を前提に、その力を最大限に発揮できるような環境を整える方法を科学します。ともに認め支えあい、知のエネルギーを共有しながら、世界中すべての人々のウエルビーイングに通じる研究を目指します。共生のための基盤づくりに向けた科学的な根拠を生み出す研究室です。最先端のケア科学を「極める」研究技術と、それを社会に「活かす」還元技術を融合した「ケア科学リーダーシップ」育成を目標にしています。

社会精神保健学(森田 展彰)

当研究室では、犯罪、アルコール・薬物乱用、児童虐待、不適応などの社会病理現象を含む幅広い精神保健上の問題について、フィールドワークや実証研究を通じて、実態把握・原因の解明・対策の提案に取り組んでいます。主な最近の成果としては以下のものがあります。

◆問題行動・精神症状の要因やその評価:児童虐待事例のリスク要因の評価、依存物質の再使用リスクの評価、精神障害や依存症と暴力の関係、行動嗜癖の要因に関する研究、

◆支援の制度や手法:オープン・ダイアローグの手法の日本への導入、薬物依存症の社会復帰支援体制の研究、アディクションや暴力事例に対するトラウマインフォームドケアの研究、アディクションのある養育者とその子どもに対する支援ツール、DV加害者更正プログラム

グローバルヘルス看護学(Ganchimeg Togoobaatar)

Reproductive, Maternal, Newborn, and Child Health is one of the public health issues. It covers the health concerns and interventions across the life course involving women before and during pregnancy; newborns, that is, the first 28 days of life; and children to their fifth birthday. Evaluation and implementation of evidence-based, high-quality reproductive health services, closing inequality, and advocacy of reproductive health rights are essential. Our current research topics include adolescent pregnancy, women's childbirth experience, respectful maternity care, hospital-based doula support, postpartum depression, elementary school children handwashing practice, and WHO guideline implementation.

地域医療教育学(前野 哲博)

地域医療、総合診療をテーマとした研究を行っています。
地域医療については、地域の豊富なフィールドを活用し、総合診療医学に関する研究、プライマリ・ケア領域における臨床研究を行うとともに、地域医療の充実に関する研究 (地域医療再生、地域における医療職支援、多職種連携、地域住民を対象としたヘルスプロモーション等を含む) を行っています。
医学教育については、臨床医学教育の充実に関する研究や、地域医療を実践できる人材を養成するシステムの開発、eラーニングなどのICT(情報通信技術) を活用した医学教育などをテーマとする研究活動を行っています。

ライフコース疫学(吉田 都美)

当教室では、広く公衆衛生学的に重要な課題に対して、疫学的方法論により記述・分析し、課題解決や政策立案へ貢献することを理念としています。近年、いわゆる医療系ビッグデータの整備が急速に進んでいることから、これらの医療データを用いた薬剤疫学・臨床疫学研究のほか、予防医学やライフコース疫学の観点から、自治体の所管する乳幼児健診・学校健診などの、子どもの健診データの利活用や情報還元を進めるとともに、環境省エコチル調査研究にも参画しています。バックグラウンドを問わず疫学や統計解析を実践的に学びたい方を広く募集していますので、ご興味があればぜひご連絡ください。

公共健康政策(宮脇 敦士)

私たちの多くはこれまでに医療を受けたことがあるはずですが、いつでも良い医療を受けられる社会は決して当たり前ではありません。限られた財源の中で、公平で質の高い医療をいかに持続可能にするか――この課題に科学的に挑むのが公共健康政策研究室です。私たちは、医学と社会科学の理論を基盤に、疫学や計量経済学などの手法を用いて政策課題を定量的に分析し、根拠に基づく政策立案(Evidence-Based Policy Making)に貢献しています。大規模な行政データや人口ベース調査を活用し、医療の質や費用の構造的要因、医療の過剰利用、健康やその格差に影響を与える政策の評価に取り組みながら、医療・健康政策に資するイノベーションの創出を目指しています。サイエンスの力でより良い社会をつくりたい方を歓迎します。