医学医療系
生命システム医学専攻
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研究内容

解剖学・発生学研究室では様々な遺伝子改変マウスを用いて、以下の研究テーマを実施しています。                

1. MafA、c-Mafグループ

我々は、マウスの示す表現型を解析し、これら病態発症メカニズム解明から創薬開発まで幅広い研究プロジェクトを展開している研究グループです。

Large MAF転写因子群、特にc-Maf、MafAの遺伝子改変マウス(コンディショナルノックアウトマウス、点変異マウス)を用い、マウスの呈する様々な異常(表現型)を発見しています。

MafA一塩基変異マウス
糖尿病を発症し、その後腎癌へと進行していく極めて珍しい表現型を示している。

c-Mafコンディショナルノックアウトマウス
c-Maf欠損が慢性腎臓病とそれに併発する心疾患に対する改善効果の可能性を見出している。

c-Maf一塩基変異マウス
希少疾患であるAyme-Gripp症候群を発症する。その異常は多岐にわたっており、c-Mafが様々な組織で重要である事を示唆している。

最新の関係論文

1) Fujino M, Morito N, Hayashi T, Ojima M, Ishibashi S, Kuno A, Koshiba S, Yamagata K, Takahashi S. Transcription factor c-Maf deletion improves streptozotocin-induced diabetic nephropathy by directly regulating Sglt2 and Glut2. JCI Insight. 22;8(6):e163306, 2023

2) Fujino M, Ojima M, Ishibashi S, Mizuno S, Takahashi S.Generation and mutational analysis of a transgenic murine model of the human MAF mutation. American Journal of Medical Genetics, Part A. 191(7):1878-1888, 2023

3) Mitsunori Fujino, Masami Ojima, and Satoru Takahashi.Exploring Large MAF Transcription Factors: Functions, Pathology, and Mouse Models with Point Mutations. Genes. 14(10),1883, 2023

4) Fujino M, Tagami A, Ojima M, Mizuno S, Abdellatif AM, Kuno A, Takahashi S. c-MAF deletion in adult C57BL/6J mice induces cataract formation and abnormal differentiation of lens fiber cells. Experimental Animals. 24;69(2):242-249, 2020

2. マクロファージにおける転写因子MAFBの機能解析

私たちは、分子生物学的手法、遺伝子改変マウス、ライブイメージング技術などを駆使し、生命現象の根幹にある分子メカニズムの解明を目指しています。特に、転写因子Mafファミリーやマクロファージの機能に着目し、発生・分化、代謝、疾患の発症機序に関する研究を進めています。

マクロファージは、生体防御や恒常性維持に必須の免疫細胞ですが、その機能が破綻すると様々な疾患の原因にもなります。私たちは、マクロファージにおける転写因子MAFBの役割に着目し研究を進めてきました。これまでに、MAFBが泡沫化マクロファージのアポトーシスを抑制することで動脈硬化を促進すること(Hamada et al., Nat Commun. 2014)、補体C1qの発現を制御すること(Tran et al., Nat Commun. 2017)などを明らかにしてきました。最近では、MAFBが虚血性急性腎障害(AKI)における炎症性脂質メディエーターの制御(Kanai et al., J Immunol. 2024)や、寒冷刺激による褐色脂肪組織(BAT)の神経密度制御(Yadave et al., Cell Rep. 2024)にも関与することを見出しました。さらに、肺腺癌における予後予測バイオマーカーとしての可能性も示唆されています(Omar et al., Int J Mol Sci. 2022)。これらの知見をもとに、MAFBを標的とした新たな疾患メカニズムの解明を目指しています。

 

3.  糖転移酵素遺伝子改変マウスを利用した生体における糖鎖機能の解明   

糖鎖および糖タンパク質の生理機能を、生体レベルの表現型解析で明らかにし、その機構を分子レベルで解明することを目的としています。現在は、ムチン型糖鎖合成関連遺伝子のコンディショナルノックアウトマウス(cKO)の表現型解析を行うことによって、組織特異的な糖鎖機能の解明を行っています。(詳細はこちらを御覧ください)
タモキシフェン誘導型全身性cKOによる表現型の網羅的解析。
腎糸球体足細胞におけるムチン型糖鎖の役割。
腹腔内常在マクロファージのアポトーシス細胞貪食におけるムチン型糖鎖の役割。

最新の関係論文

・Wakui H, et al. Incomplete clearance of apoptotic cells by core 1-derived O-glycan-deficient resident peritoneal macrophages. Biochem Biophys Res Commun. 2017.

・Shimbo M, et al. Postnatal lethality and chondrodysplasia in mice lacking both chondroitin sulfate N-acetylgalactosaminyltransferase-1 and -2. PLoS One. 2017.

 

4.  マウスを用いた宇宙環境応答のトランスクリプトーム解析   

宇宙空間でマウスを長期飼育し、宇宙環境における各臓器の遺伝子発現変化に対する影響を網羅的に評価します。骨量減少・筋萎縮のメカニズム解明による高齢化対策、低線量放射線長期被曝の生物学的影響解明による放射能防護研究に貢献することができます。

JAXA「きぼう」重点課題テーマプレリリース(2012.11.26)

報道関係(日本経済新聞2015.10.18朝刊、朝日新聞2016.6.19、夕刊読売新聞 2016.6.30等)

JAXA's No.068 April2017大西卓也宇宙飛行士がISSで行った小動物飼育ミッション

発表論文2021.4.2更新

5. p62・肝疾患

p62は酸化ストレスにより転写誘導される遺伝子として発見されました。
近年、p62はオートファジーの選択的基質として働き、タンパク質の分解や種々の疾患で見られる細胞内タンパク質凝集体の形成に関与しており、生物学的、医学的に重要な機能を持つことが明らかになってきました。
変異p62発現マウスの表現型解析を中心に、p62の新たな機能と疾患発症のメカニズムの解明を目指しています。

6. Notchグループ

「未分化細胞の塊」からシグナル伝達を通じて「秩序ある組織」ができる仕組みに興味があります。Notchシグナル経路などを題材に、遺伝子工学を駆使することで、シグナル伝達とシグナル分子を区別した新しい発生学に挑戦しています。

このような研究テーマに興味のある方または遺伝子欠損マウスやトランスジェニックマウスを作ってみたいと考えている方は,是非御連絡ください。