当院の診療内容(医療関係者向け)

診療グループ

肝・消化器

田川 学、今川 和生、森田 篤志

〈臨床研修内容〉

新生児から青年期にかけて、それぞれの年齢層でみられる消化管疾患・肝臓疾患の基本的診断方法と標準的治療を学びます。

消化管疾患としては、慢性腹痛や消化性潰瘍、難治性の便秘症や下痢症、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、消化管アレルギー・好酸球性消化管疾患などに対して消化器内視鏡検査を積極的に実施しています。さらに、免疫異常症に伴う腸炎、消化管機能不全など、まれな疾患も経験することが出来ます。

肝臓・胆膵疾患としては、胆道閉鎖症、遺伝性胆汁うっ滞性疾患(アラジール症候群、シトリン欠損症、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症など)や、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎、代謝性疾患(ウイルソン病など)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、遺伝性膵炎、さらに門脈血行異常症(特発性門脈圧亢進症、肝外門脈閉塞症など)も経験することが出来ます。現時点では、当院では小児の肝移植を実施しておりません。

検査手技としては、腹部超音波検査、消化管造影検査、内視鏡検査(ERCP、超音波内視鏡や小腸カプセル内視鏡まで実施可能)、経皮的肝生検、十二指腸液採取、栄養管理全般(在宅中心静脈栄養管理を含む)を学ぶことが出来ます。

〈研究テーマ〉

研究としては、これらの疾患を対象に、臨床に還元できる成果を目指して病態を解析しています。特に胆汁うっ滞性肝疾患、炎症性腸疾患の遺伝学的、生化学的、免疫学的な解析を得意としております。胆汁うっ滞性肝疾患の全国レジストリ遺伝子解析拠点として活動しているほか、他施設と行う基礎的・臨床的研究にも積極的に参画しています。

ぜひ私たちと一緒に診療・研究をしましょう!

神経・筋

大戸 達之、田中 竜太、榎園 崇、田中 磨衣、上野 裕一

難治性てんかん、重症心身障碍児、知的発達症、奇形症候群、代謝性疾患(ミトコンドリア病など)、神経発達症などの診断・治療を行っています。県南神経症例検討会やいばらき発達障害懇話会などを定期的に開催し、小児神経学の臨床研究・教育を積極的に行っています。

また研究面では、磁気センサ型指タッピング装置を用いた手指巧緻機能に関する臨床研究、福山型先天性筋ジストロフィーに関する研究、抗てんかん薬に関する臨床研究、小児用HALの開発に関する臨床研究、奇形症候群に関する遺伝学的検討などを行っています。

代謝・内分泌

〈当グループでの研修内容〉

外来3ヵ月を1クールとして、最初の1クールでは小児内分泌・代謝の標準的な対応を一通り身につけ、第2クールでは標準的な治療と患者さんごとの個別化について理解し、第3クール以降には小児期の内分泌状態最適化による成人期の予後改善を追及する診療姿勢を習得します。

診断・治療技術の習得に要する期間は

1か月:下垂体ホルモン分泌刺激試験、経口ブドウ糖負荷試験、甲状腺ホルモン補充療法、卵巣ホルモン補充療法、基礎インスリン補充療法

2か月:水制限試験、成長ホルモン補充療法、精巣ホルモン補充療法、副腎皮質ホルモン補充療法(中枢性に対して)

3か月:外来MRI撮影、強化インスリン療法+フラッシュグルコースモニタリング、DDAVP補充療法、ゴナドトロピン補充療法

4か月:新生児スクリーニング甲状腺初診、インスリンポンプ+フラッシュグルコースモニタリング

5か月:新生児スクリーニング副腎初診、ACTH抑制療法

6か月:新生児スクリーニング代謝初診、TW2法による骨年齢判読、インスリンSensor Augmented Pump療法

9か月:思春期ステージ診断、2型糖尿病の経口薬治療

12か月:小児がん治療後の下垂体・視床下部障害の治療

15か月:ゴナドトロピン抑制療法(リュープリン)、Kauffman療法

18か月:性分化疾患の初期診断、成長ホルモン補充療法の終了決定

24か月:2型糖尿病のインスリン療法

〈研究〉

①1型糖尿病は患者教育が最も重要なので、新規教育手法の開発を研究題材としています。全国プロジェクトである小児インスリン治療研究会において認知・心理班を担当しており、筑波大学芸術学群と共同で小児糖尿病教育マンガを作成し、クラウドファンディングで資金を得て印刷・郵送し、教育機関などへ配布するなどの啓発活動を行っています。

②外来が診療の中心となる分野なので、遠隔診療・オンライン診療などがこの分野で質の高い診療ができるかを検討する研究をしています。筑波大学発ベンチャーの遠隔健康医療相談ツールの事業者と共同でプラットフォームを開発しています。

③日本小児内分泌学会が行う遺伝子診断を含む多施設共同研究に参加しています。内分泌分野の難病診断では、全国規模で臨床家による臨床診断(phenotyping)と検査・研究機関による遺伝学的解析(genotyping)の共同作業により診断を確定しており、紹介初診患者を診る医師はgate openerとしての役割を果たします。

循環器

堀米 仁志、村上 卓、髙橋 実穂、野崎 良寛、石踊 巧、嶋 侑里子、林 立申、矢野 悠介

小児内科循環器グループでは先天性心臓病を中心に、川崎病、心筋症などの後天性心疾患、不整脈など子供にみられる心臓病すべてを対象として最新の診療と臨床研究を行っています。その対象は胎児から成人に及び、内容も臨床面では心電図、心エコー、心臓核医学、心カテーテル検査(年間約100例)などを用いた血行動態評価に留まらず、カテーテルを用いた血管病変や不整脈の治療まで多岐にわたります。基礎研究面でも血管内皮機能・凝固線溶系指標の測定から遺伝子診断まで広範囲に及びます。現在の重点研究について以下に記します。

1)胎児不整脈の診断と治療
私たちは、全国に先駆けて臨床に取り入れた胎児心磁図診断法と胎児心エコーを組み合わせて総合的な胎児心臓病の診断を行っています。胎児心磁図法は超伝導技術を応用した母体にも胎児にもまったく害のない新しい方法で、NHK教育テレビの番組でも取り上げられました。心臓病の出生前診断に威力を発揮しています。最近では心筋イオンチャネルの遺伝子変異の検索を組み合わせることにより、さらに精度の高い胎児不整脈の診断・治療法が確立され、胎児・新生児の予後の改善にも貢献することが期待されています。

2)先天性心臓病の血管内皮膚機能、凝固・線溶・血小板系の検討
医学の進歩に伴って成人に達する先天性心臓病患者の数は増加の一途にあります。これらの患者さんのQOL向上のためには動脈硬化や血栓塞栓症などの合併症を予防することが重要ですが、その病態は複雑で確立された治療法はありません。私たちは産業技術総合研究所・年齢軸工学センターとの共同研究により、最新の分子生物学的手法を用いて先天性心臓病患者の凝固・線溶・血小板系の詳細な病態解明に取り組んでいます。

3)小児期メタボリックシンドロームの診断基準、管理指針の確立
成人に見られる生活習慣病の起源は小児期にあると考えられていますが、小児ではメタボリックシンドロームの概念すら十分に確立されていません。そこで、その診断基準と管理指針を確立すべく、幼児期から思春期の小児を対象としてアディポサイトカインを含めた生化学指標、凝固線溶系指標の測定、頚動脈エコーを用いた早期動脈硬化性病変の検出などを組み合わせたコホート研究をスタートさせました。これは平成18~20年度厚生労働省科学研究費・班研究(全国約10施設の共同研究)の一員として開始したものです。

血液・腫瘍

高田 英俊、福島 紘子、鈴木 涼子、八牧 愉二、穂坂 翔、稲葉 正子

筑波大学小児科 血液腫瘍グループは国内外の小児血液腫瘍疾患の多施設共同研究グループの一員として、密接な連携による高度集学的治療を行いつつ臨床試験を実施しています。

また独自の研究として、つくば市の産業技術総合研究所との共同研究でセンダイウイルスベクターを用いた血友病の新規遺伝子治療法の開発を行っています。また、小児がんに対して陽子線治療を施行した患者様の晩期合併症や生活の質の調査等も行っています。

筑波大学附属病院中央検査部との協力によって、造血器腫瘍遺伝子異常スクリーニングと微小残存病変MRD追跡システム、ウイルス感染症モニタリングシステムを構築し、日々の診療に応用しています。さらに日本小児がん研究グループ(JPLSG)など他施設共同研究の院外検体を受け入れて、中央遺伝子診断施設として協力しています。

新生児

宮園 弥生、齋藤 誠、藤山 聡、金井 雄、日高 大介、竹内 秀輔、永藤 元道、中村 由里、花木 麻衣、岡田 侑樹

当院は2005年に総合周産期母子医療センターに認定され、茨城県の周産期医療の中核を担っています。新生児グループは主にNICU(9床)、GCU(18床)、新生児室に入院する新生児の診療に当たっています。

当グループの特徴は、小児科内の各診療グループや小児外科、心臓血管外科、脳神経外科など多様な科と連携を取りながら診療し、早産児だけでなく、非常に多彩な疾患に対して高度な集学的治療を行うことができることです。胎児診断される症例も多く、産婦人科と情報を共有しながら最適な分娩時期の決定に関わり、出生直後からの全身管理を通じて様々な疾患や治療技術を経験することができます。さらに筑波大学小児科全体でも盛んに行われている超音波検査を様々な疾患の診断だけでなく、新生児蘇生の場にも広げて、より精度の高い診断、治療に結びつけていることも当グループの特徴です。

キャリア形成として、当院は小児科専門医取得後に周産期(新生児)専門医を取得するための研修が可能な基幹施設にも指定されています。また、筑波大学附属病院は日本周産期新生児医学会の新生児蘇生普及事業(NCPR)のトレーニングサイト(全国21施設)に認定されており、小児科、産科医師のみならず、医学生や助産学生、救急救命士など周産期にかかわる全ての人材を対象に新生児蘇生法講習会を積極的に開催し、周産期医療の向上に貢献しています。

研究については、超音波関連、病院前救急、早産児の栄養関連などの臨床研究のみならず、極低出生体重児にみられる溶血性疾患の病態解明、早産児特有の免疫に関連した基礎研究、細胞レベルに注目した慢性肺疾患や未熟児動脈管開存症の病態・治療法に関する研究、さらに医学分野以外との連携によってNICUの環境に関する研究、新たなモニタリング法の開発など多岐に渡ります。

救急・集中治療

榎本 有希、城戸 崇裕、奥脇 一

当院は8床の小児専用集中治療病床(PICU)を有し、国立大学として珍しく小児救命救急センターの指定を受けております。当グループのメンバーは院内の他診療科・小児科内の他診療グループと連携し、年間300例程度のPICU入室者に対する高度医療、県内の重症小児に対する救急医療を提供しています。また当グループの特色として、研究面では臨床研究、臨床疫学研究に力を入れています。

具体的な重点研究項目について、以下に記します。

(1)小児せん妄の診断と治療

ICUせん妄や薬物離脱症候は、近年の集中治療学分野において非常に注目されている項目です。当院ではこれまで、国際的に用いられているせん妄等のスクリーニングツールの日本語版(※)を作成し、実践研究の報告を行うことで全国のPICUにさきがけて小児せん妄の知見を積んできています。現在は、国内の他PICUと連携してより大規模な疫学調査を推進しており、また生化学的な検討や予後との関連解析を行うことで、小児のICUせん妄の病態解明や管理方法の進歩に貢献したいと考えています。

※小児アセスメントツール:

http://www.md.tsukuba.ac.jp/clinical-med/e-ccm/research/PedTool/pedtool.html

(2)重症病態の小児に関連したレジストリ解析

データ通信技術の発展に伴って、「ビッグデータ」を用いた研究が、医療のみならず、科学の幅広い分野で実践されるようになりました。医療においても、大規模な患者レジストリや、健康診断データなどを用いた研究報告が増えています。しかし日本国内では未だ、こういった研究を行うデータベースの基盤は未発達であり、特に小児科領域では研究者がほとんどいないのが現状です。

当院は国内のICU,PICUで構築されるレジストリへ参加しデータ提供を行うとともに、集積されたデータを解析しています。また、それ以外にも全国規模の医療レセプトの解析や、公開された論文のシステマティックレビューなどの研究を通して、特に重症や救急病態に直面した小児に関連した疫学像の解明や、よりGlobalな視点から見た場合の治療選択の影響を検討しています。直近では当グループで作成した論文が欧州の蘇生ガイドラインに引用されるなどしており、研究成果は国内外の医療政策に直接資することを目標としています。

(3)小児救急病態における超音波検査の推進

放射線被曝を伴うCT検査や、鎮静が必要なMRI検査を選択しにくい小児年齢の患者においては、超音波検査が非常に有用です。当院には全国規模の小児超音波セミナーの講師を務めるスペシャリストが複数おり、国際的にみても、日常診療で非常に高頻度かつ高レベルで超音波検査を活用しています。超音波機器の発達もあり、従来に比べて画像評価としての質が向上しているだけでなく、肺や消化管、脊髄など、従来は超音波では評価不能とされていた部位の評価法も確立されつつあります。経験症例の分析を行い発表することで、小児に対する超音波検査の発展に貢献したいと考えています。

免疫

高田 英俊、福島 紘子、藤山 聡、今川 和生、竹内 秀輔、穂坂 翔、稲葉 正子、森田 篤志、永藤 元道、原 モナミ

原発性免疫不全症、自己炎症性疾患、自己免疫疾患など免疫が関連する疾患は臨床と研究の距離が近く、bench to bedsideが実感できる分野であると思われます。

・小児科免疫グループでは、日常的にフローサイトメトリーや遺伝子解析などの手法を用いて患者様の病態解析を行い、これまでに多くの成果を得ています(業績

・原発性免疫不全症患者の感染予防に関して、薬剤予防内服や予防接種の実態を調査するための全国調査を主導しています(現在進行中の臨床試験

・研究面では、当院皮膚科グループや近隣医療機関と連携し、重症アトピー性皮膚炎の病態解析や遺伝子解析を行っています。また、産業総合技術研究所との共同研究で、遺伝毒性を排除した新規遺伝子治療法の開発を行っています。他にも、国立環境研究所と共同で、胎児期・新生児期に特有の免疫状態を解明するための研究や、小児期発症炎症性腸疾患の免疫学的解析に関する研究、小児食物アレルギーと腸内細菌叢の関連に関する研究などを行っています。