統合医科学研究部門
感染体宿主動態学分野

インフルエンザウイルスの感染現象を規定する細胞機能の解明


ウイルスは感染した宿主細胞の中でのみ増殖する感染体であり、菌類とは異なり、栄養分のみでは増殖しません。ウイルスの細胞表層への結合から子孫ウイルス粒子の放出にいたるまでの過程では、数多くの宿主細胞の生理機能と宿主細胞由来の遺伝子産物(以下、宿主因子)がウイルスによってハイジャックされています。一方、宿主細胞は生体防御系を含む、生理機能の緊急応答を発動し、生命プロセスを維持しようとします。従って、ウイルスによる宿主因子の強奪と感染に応答した生理機能との攻防によって、ウイルスの種特異性や病原性は規定されています。

A型インフルエンザウイルスは、カモなどの水禽類を自然宿主とし、水禽類から陸生の鳥や哺乳動物へウイルスは伝播します。しかし、鳥から単離されたウイルスはヒトでは増殖しにくく、鳥由来のウイルスが種の壁を超えるには、ヒトの宿主因子に適応する必要があることが推測されます。また、自然宿主である水禽類では、インフルエンザウイルスが感染しても病原性を示しません。そこで我々は、インフルエンザウイルスの(1)種特異的な感染現象を規定する分子機構、と(2)病原性を規定する分子機構を明らかにすることを目標に、インフルエンザウイルスの増殖に関与する宿主因子と生理機能の応答機構を研究しています。また、得られた成果をもとに、抗ウイルス薬の開発も展開しています。


部門長

川口敦史 教授



主任研究員

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