近年の肥満ならびに生活習慣病患者の増加により、これら疾患の予防および治療に対しての有効な方法が早急に求められています。我々は、炭素数12-16の飽和・一価不飽和脂肪酸を基質とする脂肪酸伸長酵素Elongation of very long chain fatty acids member 6 (Elovl6)をクローニングし、Elovl6欠損マウスの各臓器や血液では脂肪酸組成が鎖長や不飽和度に応じて著しく変化するとともに、肥満にともなうインスリン抵抗性、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH)、動脈硬化など様々な生活習慣病の発症・進展が抑制されることを明らかにしました。すなわち、臓器や細胞に蓄積する脂質の「量」のみならず、脂肪酸の組成といった脂質の「質」もエネルギー代謝の重要な決定因子であり、Elovl6の阻害は肥満が持続した状態においてもインスリン抵抗性、糖尿病、心血管リスクを改善する新たな治療法となる可能性があります。
そこで、本研究では、Elovl6を中心に脂肪酸の質から生活習慣病、神経変性疾患、がんなどの病態を解明し、脂肪酸組成のコントロールを基盤とした代謝関連疾患の新規予防法・治療法の開発を目指します。
松坂 賢 教授
研究室