筑波大学消化器外科

筑波大学消化器外科

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私達には3つの使命があります。
  • ◎現代における最高の外科治療を提供すること
  • ◎未来の医療を創造すること
  • ◎誠実な外科医を育てること

外科医としての孤独を楽しむ

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外科医は孤独なものです。
ご存知の様に、手術室はOperating Theaterと呼ばれます。 その劇場で主役を演じる外科医には1人で堪えなければならない孤独があります。私達をとりまく外科環境は激変し、鏡視下手術、ロボット手術といった技術的な革新への対応が、Theaterでの演目として求められている部分は多分にあります。 ですが、最新=最高ではありません。既存の技術を工夫する事無く漫然と続ける姿勢は戒められるべきですが、新しい技術を盲目的に取り入れる事も慎まなければなりません。 私は、現時点における最高の外科治療とは何かと問われたら、新規技術と既存技術のバランスだ、と答えたいと思います。新規技術を取り入れる勇気も、既存技術を維持する頑なさにも、どちらにも孤独が伴います。 その孤独を支えるのは、日々の知識の蓄積、技術の研鑽、新規治療を開発する情熱、そして、患者さんへの深い優しさだと思います。一言で言えば、どれだけ誠実に外科医をやっているか、という事に尽きるのだと思います。 その全てを兼ね備えた誠実な外科医だけが手術室で主役を演ずる事を許されるのです。
この外科医としての孤独を苦痛と感じるのではなく、楽しむ事が出来るスタッフが集まった時、現代における最高の外科治療は叶えられるのだ、と私は思っています。

臨床研修:“消化器外科・臓器移植外科は1人1臓器体制”が質の高い指導を可能に

若い人が仲間に入ってくれることが全てだと思っている

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たとえば国家の発展を考えた時、産業よりも教育の方が大事だという意見があります。私達の外科グループをそれに当てはめると、日々の外科技術、研究ももちろん大切なのだけど、若い人が仲間になってくれて、その新しい人を育てない限り、私達グループの未来はありません。 その人たちが10年後、20年後に活躍出来る組織にならないと、私達は組織として存続できなくなると考えています。 ですから、誤解を恐れずに敢えて言うなら、ある程度ベテランと言われるスタッフが活躍する事よりも、入局してくれた若い先生が充実した外科医生活を送る事の方に私は重点を置きたいと思っています。 なんでもかんでも、高難度手術も全て若手にやらせるという意味ではもちろんありません。ですが、若手外科医がスタッフの手伝い、下働きだけに時間を費やす事なく、外科診療の中心に若い外科医がいる、そんな組織を目指しています。

“何でも知っていて何でもできる外科医”を目指している方をお待ちしています。

女性外科医の活躍なくして私達のグループの未来はない

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私は女性外科医の皆さんをとてもカッコいいと思っていて、そのカッコいい人たちが一杯いるグループを作りたいと思っています。その為に、私達は、女性外科医のライフキャリア、外科医のワークシェアによるQOLの向上に取り組みます。 私事ですが、私の妻も手術の面白さを知る消化器外科医でした。彼女自身も消化器外科医としてのライフキャリアを積みたいとずっと望んでおりましたが、今は研究の世界で活躍しています。ある意味では、外科の楽しさを享受する権利を私に譲ってくれた、という面もあったかもしれません。 ですから、私はそのお礼を、女性外科医のライフキャリアを守る事で果たしたいと思っています。今も何人かいる女性外科医の医局員、そして、これから仲間になってくれる皆さんが、消化器外科医として50歳、60歳まで働けるロードマップを精一杯サポートしたいと思っています。 それと同時に、女性外科医、女性医療者をパートナーに持つ男性医局員、そして、医療職に限らず、キャリアを持って仕事を続けているパートナーを持つ男性医局員が、家庭人としての役割を果たせる様に、男性外科医のライフワークバランスを保つことに努めます。

医学研究の分野で世界のトップランナーとして活躍したい方だけでなく学問のにおいをかいでみたい方もお待ちしています。

Surgical scientistとして科学の発展に寄与する

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現代の外科医は自動吻合器、エネルギーデバイス、鏡視下手術、ロボット手術といった技術的な革新、その変革の流れへの対応、技術習得に追われて基礎研究どころではない、という本音はよく聞かれます。 しかし、私達はSurgical scientistではなく、Surgical technicianで良いのでしょうか? 「外科医はもっと基礎研究をやるべきである」との緊急提言がNatureのEditorialに掲載されています(Nature. 2017;544(7651):393-394)。 「基礎研究に従事する事は日々の外科臨床レベルを厳格に保つ事に不可欠なのだ。さらには、移植、外傷、奇形、膵癌など、外科医が中心的に扱う疾患の研究を外科医がやらないで誰がやるのだ、誰がその科学的進歩を担うのだ」とNatureは危機感をつのらせています。 私達は手術技術だけに重きを置くのではなく、自ら基礎研究を行うことを重要視しています。科学の発展をただ享受するのではなく、科学の発展に積極的に寄与するグループでありたいと思っています。

“外科医互換システム”を推進していきたいと考えています。

Sustainableな医療スクラムを組む

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先のラグビーワールドカップでは、ルールもあまり分からない私も日本チームの活躍に心躍らされました。スクラムはただ皆で前に押しているだけかと思っていましたが、周囲の選手の状況を察知しながら、前後、左右に力の配分を臨機応変に変えて、集団としての機能を最大化させていると聞きました。 茨城県の外科医療の今後を考えた時、今までの1病院を1外科チーム(3人の最小単位)で担うという1対1のスタイルでは、継続性を保てないと思っています。一人の外科医が一カ所の病院だけで働く、1つの病院の患者だけに責任を果たせば良いというシステムからの脱却が不可欠だと思います。 私は、いくつかの病院からなる地域、病院群でものを考える事が一つの、というか唯一の解決法だと考えています。各自のベースとなる病院はもちろん定めるのですが、エフォートの2−3割は他の病院の為に働く。そうする事によって、逆に自分の病院の不得意な分野、困っている事に対しては、周囲の病院の外科医の助けを得られる。 そういった医師が行き来する、“外科医互換システム”を推進していきたいと考えています。手術患者の情報も共有して、ベッド、手術室、各病院の得手不得手を勘案して、患者も行き来する、“患者互換”も同様に必要でしょう。つまり、多対多で支える医療スクラムというシステムの実現です。

自分の事よりも困っている人の役にたつ事に意味を感じる

人生で一番大事なことは、自分のことだけを考えないという事

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先日、2018年ノーベル平和賞を受けたコンゴの産婦人科医、ムクウェゲ医師が来日した際のインタビューの言葉が胸に残りました。 ムクウェゲ医師、戦闘地域において戦争兵器として使われる性暴力に立ち向かうその姿は「女を修理する男」という映画に詳しく描写されています。 「人生で一番大事なことは、自分のことだけを考えないという事。自分のことだけに限ってしまうと、人生は矮小化してしまう。」彼はそう言いました。私達は外科医を志した時、人の命を助ける、より直接的に命を扱う充実感に憧れたはずです。 若者の外科医離れの理由が、各自のライフワークバランスという言葉に影響されています。その事を重視しすぎる若者、そしてシニアが多くなっているのではないかと危惧しています。 ワークバランスとう言葉を借りて、自分ファーストを貫く姿勢には、アメリカのトランプ大統領に向けられるものと同様の視線がそそがれる事に気づかなければいけないと思います。 ライフワークバランスもちろん大切です。ですが、私達の最も根本にあったはずの、「自分の事よりも困っている人の役にたつ事に意味を感じる」とう価値観は時代遅れなのでしょうか?私はそうは思いません。 “自分の事だけを考えない”という生き方が外科医療においても、研究においても、そして自らの人生を豊かにする上でも、最も大切な規範だと思っています。