[私はこうして入局を決めました]
インタビュアー//大和田洋平(2008年 山形大学卒)
S2(2019年 秋田大学卒)
永井志歩
Nagai Shiho
あの日の衝撃から
永井:医学部を志した時、初めはむしろ内科、総合診療科、町医者が身近なのでそういうイメージで入学しました。
大和田:外科からは最も遠い印象のある科ですね。永井:そうですね。私が低学年の頃はちょうど医学教育が盛り上がってきていた時代だったので、なんとなく総合診療科に行くのだろうなと考えていたのですが、 秋田大学3年生の時に早期臨床実習というプログラムで市中病院に実習に行った時に、たまたま手洗いをして術野に入れてもらえる機会がありまして。 3人で実習に行っていたのですが、1人だけ術野に入れるということで、じゃんけんで勝って入れることになりました。 その時の手術が開腹の幽門側胃切除術だったのですが、その手術がすごく洗練されていて、おそらく同じメンバーで何度も行っている定型的な術式なので、 無駄がなく綺麗で、それでいて確認すべきことはみんなで確認しながら丁寧に行われていて「すごいな」と思いました。
大和田:かっこいいなと、憧れる感じですか?永井:そうですね。手術ってこういう感じなのかと衝撃を受けて、自分でもやってみたいと思いました。
大和田:すごくいい動機ですね。うらやましいです。永井:その後、臨床講義(座学)が始まったのですが、扱う臓器が多く、患者数が多い科の方が興味を持ちやすくて、 消化器、循環器が内科・外科問わずおもしろいなと思いました。 その後、実際に臨床実習で色々な科をまわってみて消化器外科が一番楽しいと思いました。
大和田:初めて見た手術の衝撃がそのまま残っていたということなのですね。他に迷った科はありましたか?永井:心臓血管外科も実習で手術を見学するとすごく面白くて、初期研修でもローテーションしたのですが、仕事としてやっていくと考えた時に最終的に消化器外科の方が良いなと思い決めました。
なぜ筑波大学なのか
永井:まず、エリアとして茨城を選んだのは、生まれ育った地なので肌に合うかなと思ったのがあります。
大和田:永井先生は地域枠とか奨学金という縛りはなく?永井:はい。特にそういう縛りはないです。
大和田:茨城の中で筑波大学を選んだ理由は?永井:学生の時に茨城県内の病院をいくつか見学に行ったのですが、筑波大学から実習に来ていた学生の雰囲気が良いなと思ったのと、 筑波大学ではどの科の先生も指導的な先生が多い印象で、出身大学とかも分け隔てなく教えてくださる感じがしたので、ここなら安心だなと思い初期研修は筑波大学にしました。
大和田:その後に筑波大学消化器外科に入局するのにも繋がっていくのかな?永井:バックグラウンドとして他大学出身で知り合いもいない状況でしたので。 自分のキャリアを自分で組み立てられる性格であれば市中病院でも良いかなとは思ったのですが、 自分の性格的に新しい環境に慣れるのにも時間がかかるし自分でどんどん人脈を広げていくというのは難しいと思ったので、 医局という大きな組織に所属して、その中の繋がりでキャリアを形成していく方が自分には合っているのかなと思いました。
大和田:そうなのですね。私も同じようなバックグラウンドなのでよくわかります。やりがい
永井:基本的に毎日楽しいです(笑)
大和田:それは最高ですね(笑)。永井:業務の中で嫌いなこともないですし。手術はもちろんですが、それ以外でも患者さんと接しているのは楽しいです。
大和田:外科医になったと実感するのは?永井:最初にすごく感じたのは、ファーストコールで他院から紹介を受ける時に、自分で画像から診断して、上司に相談して、手術を執刀して、 術後管理をしてという一連の流れを自分でマネージした時に「外科医になるって、こういうことなのか」と感じました。
大和田:よくわかります。一つ一つのことを自分で判断していかなければいけないし、スピード感を持って進めないといけないですしね。緊急手術も好きなのかな?永井:好きですが、時間帯によります(笑)。
好きなことを
永井:夜間に緊急手術をして翌日朝早いというのはさすがにきついですが(笑)。どの科でも起こり得ることですし、いつまでも忙しいということはないので。
大和田:どの科に行っても大変なことはありますよね。永井:消化器外科だから大変というよりは、内科でも大変だと思いますし、基本的に楽な科はないと思います。それだったら好きなことをやるのがいいのかなと思います。
大和田:すごくわかります。医学部の学生にも同じことを話しています。永井:きつくても、まぁいっかと思える科の方が最終的にはきつくないと思います。
大和田:永井先生は本当に外科医向きだと思います。壁、そして成長
永井:ご指導いただいた先生方が若手に経験させてくださる先生が多いので、昨年度はヘルニア修復術、腹腔鏡下胆嚢摘出術、腹腔鏡下虫垂切除術から始まって、 開腹手術での大腸切除、胃切除も執刀しましたし、ラパコロン(腹腔鏡下結腸切除術)も数例経験させていただきました。
大和田:すごいですね。消化器外科1年目からかなりの執刀を経験されているのですね。そして、憧れの幽門側胃切除術も経験されて。イメージされていたものと比べてどうでしたか?永井:自分なりに勉強してから手術に臨むのですが、やはり難しいです。前立ちの先生が全てコントロールしてくださって手取り足取りでご指導いただいています。 昨日も幽門側胃切除術を執刀したのですが、少しだけブラックボックスが開いた感じがしました。
大和田:これまでわからなかったところが、ポンと抜ける瞬間ってありますよね。扉が開くというか。理解が深まると手術がシンプルになっていきます。 永井先生が外科医として順調に経験が積めているということがよくわかりました。 外科医として同じ施設でずっとやっていくのも一つの方法だとは思いますが、色々な施設で研修することで手術を多角的に見ることができ理解が深まっていくので、それも医局に属するメリットかなと思います。永井:今年で二施設目ですが、自分では気づいていない手技の不自然な部分を改めて指摘、指導してくださいますし、施設が変わることは悪いことではないし、むしろメリットなのかなと思いました。
大和田:自分の経験でも施設が変わると、階段状に成長していきますよね。 4月になって急に成長するわけではなく、数か月経った時にぐんと成長するイメージです。新たな視点で指導してもらえることはもちろんですし、 施設が変わると自分も頑張るし、同じ術式でもアプローチの方法が違うと術式に対する理解が深まるということもあると思います。 施設が変わることは自分が成長するチャンスだと思っています。先輩方のように
永井:今の時点では専門臓器や施設へのこだわりはないのですが、40代50代になった時に茨城県内の主要な施設で消化器外科診療の中心にいて後輩の指導も担っているような、 今、自分がご指導いただいている先生方のようになりたいです。Common diseaseからたまにしか来ない稀な症例のトラブルシューティングまで対応力があって、 多職種ともコミュニケーションを取れて病院の中心にいるような。 基本的なことがきちんとできるようになりたいです。これからも地域に根差して頑張っていきたいです。
大和田:しっかりした考えを持っていて感心しました。今日はとても楽しかったです。